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胃がん、大腸がん、肝がん、肺がん、乳がん、前立腺がん――。日本人に多いこれらのがんについて、それぞれの薬の「処方患者数ランキング」を一挙掲載。さまざまながんにおける薬物治療の実態をデータで明らかにした。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

個別化医療が進んだ肺がん
遺伝子変異で薬を選択

 胃がん、大腸がん、肺がん、肝がん、乳がん、前立腺がんの主要6がん種で近年最も薬物治療が進歩したのは肺がんである。

 2000年代初頭に分子標的薬のゲフィチニブ(製品名:イレッサ)が登場するまでは、従来の細胞障害薬による化学療法が中心だった。分子標的薬が登場すると、遺伝子変異の有無によって薬が選択されるようになった。個別化医療が進んだのである。そこに免疫チェックポイント阻害薬までが加わった。

 肺がんには、大きく分けて「小細胞がん」と「非小細胞がん」がある。患者の約8割を占める非小細胞がんの1次治療では、がんの増殖に関わるEGFR遺伝子変異の有無とALK融合遺伝子やROS1融合遺伝子の有無を事前に検査し、それが薬の選択に反映される。

 EGFR遺伝子変異がある場合、EGFR阻害薬のゲフィチニブ、エルロチニブ(製品名:タルセバ)、アファチニブ(製品名:ジオトリフ)のいずれかを使う。これらに抵抗性が見られた場合、2次、3次治療では、処方患者数ランキングで6位の新世代の薬であるオシメルチニブ(製品名:タグリッソ)が選択肢になる。

 ALK融合遺伝子がある場合、ALK阻害薬のアレクチニブ(製品名:アレセンサ)かクリゾチニブ(製品名:ザーコリ)、あるいはセリチニブ(製品名:ジカディア)を使う。これら三つの薬に耐性が出た場合、18年に承認されたロルラチニブ(製品名:ローブレナ)を使うと効果が期待できる。ROS1融合遺伝子があればクリゾチニブを使う。

 免疫チェックポイント阻害薬では、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)が一定の条件下で2次治療以降に使える。

 4位のペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)は単剤や他の薬との併用で、アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)は併用で、一定の条件下でそれぞれ1次治療に使える。EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子が全て陰性の患者に新たな選択肢が生まれたのである。なお、アテゾリズマブは8月に進展型小細胞肺がんへの適応も認められた。

 免疫チェックポイント阻害薬を使って「がんがほとんど消えたという人がポツポツいる」とがん研有明病院総合腫瘍科部長の高橋俊二医師は言う。ただ、驚くほど改善するケースがある一方で、胃がんの3次治療だったり治療をし尽くして状態が非常に悪くなった患者への投与ばかりだと、本当に効いているのか分からないことも多いのが実感だという。