前立腺がんの手術は現在、手術支援ロボットを使った「ロボット支援手術」が主流になっているが、他に放射線治療や薬物治療もある。前立腺がんでのロボット支援手術を2006年に国内で最初に手掛け、累積手術数で国内1位(ランキングは「週刊ダイヤモンド」10月19日号第一特集『選ばれるクスリ・医者・病院』に掲載)の吉岡邦彦医師(板橋中央総合病院ロボット手術センター長)が治療の選び方について語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
手術選択「今はもうロボット一択」
性機能温存は技量が影響する
――吉岡先生によるロボット支援手術の症例数は2000例。なぜずばぬけて多いのですか。
もともと開放(開腹)手術が得意かつ大好きで、東京医科大学に勤務していたときから手術担当みたいな感じでした。国内で他の医療機関が(前立腺がんのロボット支援手術を)やっていない頃、海外で行われているという事情を知った患者がやって来ました。他の医療機関が始めてからも難しいケースの患者が送られてきました。東京医大のときに1400例はやっているんです。
――前立腺がんの治療法には手術、放射線治療、薬物治療がありますが、それぞれで選択肢が増えています。手術には大きく分けて、メスで切り開く開腹手術、腹部に小さな穴を開けてカメラや手術器具を挿入する腹腔鏡手術、腹腔鏡手術をロボットが支援することで進化させたロボット支援手術があります。患者はどのように選択すればいいと考えますか。
手術にはその三つの選択肢がありましたけど、今はもうロボット一択です。
――ロボット支援手術一択?
前立腺がんにおいてはロボット一択。ロボットがない医療機関は開放手術や腹腔鏡手術をやる。
――ロボットにメリットがあるということですか。
よく言われているのは、傷が小さいので術後の回復が早い。日本だと10日ぐらいの入院です。退院するときは「ゴルフ、明日行きたかったら行ってください」と言っています。「体は元気になっています」ということです。
――性機能を温存したい場合の手術もやはりロボットですか。
前立腺がんでは、神経温存(勃起神経を残す性機能温存)をやっていい症例と、がんを取り残すなどのデメリットが起こりそうな症例があります。温存しても比較的安全かどうかなどを患者に説明し、その上で温存術式をしたケースに限定していえば、ロボット支援手術の方が上ですね。
ただ、これも術者の技量によります。術者の手腕はどの術式でも影響してきます。
ロボット支援手術をやっている人がみんなうまいかといえば、そんなことは全然ない。うまい人で比べたら、ロボットの方が他の手術よりうまくなるということです。道具がいいから。