新学閥第5回

特集「新学閥 早慶・東大・一橋・名門高校」(全19回)の第5回では、上智大学、明治大学、立教大学、青山学院大学、中央大学、日本大学の主要私大6校を取り上げる。「上智といえば海外駐在組の多い国際派」「中大といえば法曹界での最大学閥」……。そんな一般人が抱く印象とOB会の実情は大きく異なる。有名私大の知られざるOB会事情をのぞいてみよう。(「週刊ダイヤモンド」2019年7月13日号を基に再編集。肩書や数字は当時のもの)

【上智大学】
早慶との格差は拡大の一途
元祖国際系大学のジレンマ

上智・明治・立教・青学・中央・日大…有名大OB会の知られざる実態海外ソフィア会の中でもその規模の大きさと活動の多さで知られるNYソフィア会

「上智らしさとはどんな意味か」「NYでは慶應に子女を入れたい志望者ばかりだ」。2018年5月。米ニューヨークで曄道佳明・上智大学学長を囲んで開かれた、在NY上智OBによるNYソフィア会の懇親会。居並ぶOBからは学長に対して遠慮ない言葉が飛んだ。

 上智のOB会組織、ソフィア会の中でも、NYは設立50年以上の歴史と200人もの会員を持つ、海外ソフィア会でも最大組織の一つだ。学長に対する手厳しいOBの声は、ソフィア会が置かれた苦況の象徴でもある。

「早慶上智」とたびたび並べられる上智だが、現実問題としてOB会の規模では早稲田大学や慶應義塾大学とは全く比べものにならない。卒業生の数は14万人だが、OB会が連絡先を把握している人数はかなり減る。その中で同窓会に積極的に参加しているのは数千人にとどまるとみられる。ソフィア会の予算は早稲田の稲門会のわずか5分の1程度にすぎず、求心力の弱さは否めない。 今後の同窓会活動をどうするべきか――。今年5月、ソフィア会では専門の検討委員会で足かけ2年に及んだ議論を90ページにわたる部外秘の「将来ビジョン」としてまとめた。その中では「慶應、早稲田と同じものを目指すのは現実的ではない。上智らしさを大切に、身の丈に合った同窓会活動運営をしていく」(戸川宏一・ソフィア会会長)ことが確認された。つまり“元祖”国際系大学という点を強化するという方向性だ。

海外OB会の活動強化で
他校と差別化図る

 海外298校と提携し、現在留学中の学生は81カ国に1760人いるという上智。大学として海外拠点を九つ持っており、それが42カ国63都市に存在する在外OB会と連携するという特徴もある。冒頭のように学長が定期的に海外ソフィア会を“巡回”するのも定例行事だ。「数人しか参加者がいない小さな集まりにまで学長が来た」(別の在米ソフィア会会員)と、海外での地固めに余念がない。

 海外ソフィア会の運営でも改革が進む。前出のNYでは、世界のソフィア会の中でも最年少の31歳の会長が誕生した。

「これまで行ってきた会員同士の懇親だけではなく、留学中の在学生をOBがメンターとしてサポートする活動や、国際機関のパネリストと協力しての、会員のキャリア開発につながる活動などを強化する。上智のNYオフィスとも協力して、駐在員のお子さんの進学相談なども行いたい。若手会員がソフィア会に求めるニーズに応える」とNYソフィア会会長のエドガー鮎美さんは言う。

 国際化はほぼ全ての大学が進めており、それだけではもはや目新しさはない。規模では三田会や稲門会にかなわないソフィア会は、独自色でOBの心をつかむべく躍起になっている。