驚いたことに、9月に解任されたはずだった西川廣人・前日産自動車CEO(最高経営責任者)が着々と院政を敷きつつある。関係者によれば、早速、新経営メンバーを呼びつけて個室に呼び出して役員人事に介入しているという。そして、西川氏の暴走でほくそ笑んでいるのは、やはり「あの策士」だった。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)
近く臨時取締役会を開催か
西川、豊田、スナールの悪だくみ
電撃的な解任劇から1ヵ月が経過した。9月16日に社長兼CEO(最高経営責任者)の職を解かれたはずの西川廣人・日産自動車取締役(以降、西川氏)が、今もなお、横浜の日産グローバル本社へ出社し続けている。朝から夜まで、ほぼ皆勤賞という熱心さだ。
さすがにCEO室からは退去したが、ボディーガードと秘書はついたまま。本社21階の役員フロアに、副社長クラスと同等の広さの個室があてがわれている。ご丁寧にも、ドア付近には「HIROTO SAIKAWA」のネームプレートまで備え付けられた。これから長きにわたって、会社に居座ることを決めたという意思表示なのだろうか。
取締役ポストに残ったとはいえ、日常のすべての執行業務からは解放されているはずだ。一体、西川氏は何をしているというのか。
来る日も来る日も、西川氏が役員を呼びつけている光景を多くの社員が目撃しており、いぶかしがっている。
それもそのはずだ。日産は、10月8日に新経営体制を発表し、再出発のスタートラインに立った。内田誠・専務執行役員(53歳)が社長兼CEOに、アシュワニ・グプタ・三菱自動車COO(最高執行責任者)が日産COOに、関潤専務執行役員(58歳)が副COOに就くトロイカ体制が決まり、ようやく経営の混乱に終止符が打たれたのである。
にもかかわらず、「過去の人」がはかりごとを巡らせている。西川氏が部屋に呼びつけている役員には、新経営メンバーである内田専務と関専務に加えて、人事担当の高橋雄介・専務執行役員(57歳)が含まれている。この人選からも察しがつくように、西川氏はどうも、新たな役員人事に介入することで、自身が影響力を行使できる執行体制を構築しようとしているのだ。はなから会社を辞める気などサラサラなかったのである。