アマゾン・ドット・コムPhoto:Reuters

――筆者のジュリー・ジャーゴンはファミリー&テクノロジー担当コラムニスト

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 ニューヨーク在住のジビー・オーウェンズさんが数カ月前、セラピストの治療を受けていると、携帯電話のメッセージ着信音が鳴り始めた。それはアマゾン・ドット・コムからのメールで、人気テレビアニメ「パウパトロール」の玩具を自宅に配送中だということを確認する内容だった。

「次から次へと通知が来た」とオーウェンズさんは話す。

 オーウェンズさんはその朝、自分の身支度を調える間、当時4歳の息子にiPad(アイパッド)を使うことを許したと話す。アイパッドにはアマゾンのショッピングアプリが入っている。息子はそのアプリの検索バーにあるマイクロフォンのアイコンをタッチする方法を習得し、「パウパトロール」と呼びかけたらしい。アマゾンの音声アシスタント「アレクサ」はその指示に従い、数え切れないほどの関連玩具を表示した。男の子はどうにかして10点以上の商品をカートに入れ、「購入」ボタンをタップした。

 アマゾンで商品を注文するのはかつてないほど簡単になった。現在、1億台以上のアレクサ搭載端末が世界中に出回り、毎月数千万人以上の顧客がキッチンや洗面所、自動車の中などで利用している。つまり、ほぼどんな場所からも商品は注文できるのだ。

 字を書けない小さな子どもに、アレクサは(サンタのすみかである)北極圏に匹敵するような魔法の世界の扉を開いた。こうした早熟な子どもを持つ親にとって、アレクサを黙らせることはもはや必須だ。

 オーウェンズさんが全部の注文を把握した頃には、もうキャンセルは間に合わなくなっていた。「箱が後から後から家に届いた。息子はこれを全て自分が注文したことに興奮し、ぴょんぴょん飛び跳ねていた」と彼女は言う。

 オーウェンズさんは息子の手元にボードゲームを残し、他の子どもの誕生日プレゼント用に数点は取っておいた。それ以外を返品したが、息子には大泣きされたという。さらにアイパッドからショッピングアプリを削除した。