津賀体制が8年目を迎えるパナソニックで、次期社長の椅子を巡る競争が始まった。津賀社長の人材登用の基準が疑問視されていることもあり、社内には「白けた」雰囲気が漂うが、候補者たちは静かに闘志を燃やしている。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の#06では、本格化する後継者レースの行方を追う。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、千本木啓文)
“お友達人事”と批判される
次期社長候補の共通項とは
ある役員(当時)が「尊敬する人は誰か」と聞くと、津賀一宏・パナソニック社長は少し気恥ずかしそうにしながら、しかし大真面目にこう答えたという。
「松下幸之助」――。
パナソニックの創業者である松下幸之助は「人使いの名手」といわれたものだが、翻って津賀社長の人事は社内でどう見られているのか。
「津賀さんの人事には納得感がない。社員はみんな、怒っているというより、すっかり白けてしまっていますよ」。まずは後継者の有力候補から人事の妥当性を探るのが定石だと思い、パナソニック幹部に尋ねてみると、のっけから手厳しい答えが返ってきた。
そもそも、就任8年目となる津賀社長だが、本特集の♯02で既述した通り、現時点では指名・報酬諮問委員会も、そして津賀社長自身も即時の社長交代は考えていないもようだ。足元で急速に落ち込む業績を立て直し、将来の成長ドライバーを確定するまでは、津賀社長が続投する公算が大きい。
しかし、そこは8兆円企業である。津賀社長による長期政権が続く中、まさか次期社長の選定が手付かずであるわけはなく、すでに後継者レースは熱を帯びている。