パナソニック 老衰危機_#10_勝手再生計画Photo:Masataka Tsuchimoto

2019年11月に発表された新中期戦略の「詳細」は、成長戦略も判然としなければ、構造改革の具体性にも乏しいものだった。成長ドライバーとして期待した自動車事業が不発に終わり、20年3月期は営業利益が前年同期比1000億円も減るというのに、だ。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の最終回では、ダイヤモンド編集部による「勝手再生計画」を策定。近い将来、パナソニックが「売却する事業」と「買収する事業」を予想した。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「くらしアップデート業」よりも
「両利きの経営」が重要?

 2019年11月、雨が降りしきる中、例年と比べ半年遅れで開催した「IR Day」(投資家向け説明会)は、パナソニック上層部にとって忘れられない日となったに違いない。ここでの新中期戦略の「詳細」を巡り、アナリストから「成長戦略が判然としない」とボコボコにされたのだ。

 パナソニックでは前中期戦略で「高成長事業」に据えていた自動車事業が不発となり、20年3月期は前年同期より1000億円も営業利益が落ちる見込みだ。IR Dayを予定より半年も遅らせておきながら、成長戦略を示せなかったことにアナリストがいら立つのも無理はない。

 しかし、従業員27万人、売上高8兆円の大企業が、「次の柱」を何にするのか決めていないことなどあり得るのか――。

 それがあり得るようである。あるパナソニック役員は、「次の柱については、どう打ち立てるかという方法論を含め、定まり切っているとはいえない」と、あまりにも正直に語る。

 そんな中、最近パナソニック上層部が折に触れて口にするワードがある。「両利きの経営」だ。ことによると、一昨年のパナソニック創業100周年を機に津賀一宏・パナソニック社長が目指すべき姿として提唱し、「意味がちっとも分からなくて社内で消滅しかけている」(パナソニック社員)という「くらしアップデート業」より登場回数が多いかもしれない。

 どうやら、ここにパナソニックの“真意”が込められているようだ。