パナソニック 老衰危機_#07_三洋の亡霊
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パナソニックは賭けに負けた。プラズマテレビを切り捨てた津賀一宏社長が、家電に代わる本業として掲げた自動車事業が営業赤字に陥っているのだ。三洋電機買収や戦略投資で巨費が投じられたにもかかわらず業績不振の自動車事業は、今や金食い虫。単独での生存すら危ぶまれる状況にある。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の#07では、パナソニックの自動車事業の「存続可能性」を検証する。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、浅島亮子)

消えたB to Bシフト
自動車事業に漂う手仕舞いムード

「結局、パナソニックのDNAはB to Cなのです。津賀(一宏社長)くんが、わかりやすいメッセージとして『B to Bシフト』を掲げた気持ちはわからなくもないが、今でもパナソニックの中で一番強い事業は家電だ。B to Cを否定したのは、いただけなかった」(パナソニックOB)

 B to Bシフト――。巨額投資を行ったプラズマテレビが液晶テレビとの戦いに完敗し、2013年にプラズマ撤退を余儀なくされたパナソニックは、“家電の王様”であるテレビ事業の大幅な縮小によって「家電の松下」としての確たる“ブランド”を失った。

 そこで津賀社長が、パナソニックの新たな拠り所として発信したスローガンこそ、「B to B(企業向けのビジネス)シフト」だった。

 中でも、車載電池と車載機器から成る自動車事業に対する津賀社長の期待は大きかった。特にこの4年間は、「戦略投資」として全社に投じられた8500億円のうち、過半が自動車事業に集中投下されたほどだ。

「『車載じゃなければ事業じゃない』とばかりに、経営上層部はとにかく、自動車事業ばかりに金を注ぎ込んでいた」。コーポレート部門の社員は、ふんまんやるかたない思いで振り返る。

 しかし今、むしろ、自動車事業には手仕舞いムードが漂っている。いつの間にか「B to Bシフト」という言葉もパナソニック社内から消えた。

 13年3月期に掲げた自動車事業とデバイス事業の合計で「売上高2兆円」という目標こそほぼ達成したものの、19年3月期の自動車事業は121億円の営業赤字に低迷している(自動車事業のみの売上高は1兆5232億円)。20年3月期から始まった新中期戦略ではついに、高成長事業から「(構造改革が急務の)再挑戦事業」へと転落してしまった。

 国内の主要な自動車部品メーカーの中でも赤字となっているのはパナソニックだけである。