2億円の配当金収入があっても
働き続ける親リッチの思惑

 そうした親リッチたちの最大の関心事は、家業や多額の資産をどう受け継ぐかということ。

「年収は同世代より少し低いくらいですが、年間の配当金収入が2億円近くあります。正直お金に困ることはありませんが、今も働き続けていますよ」

 東京都港区で生まれ、慶應幼稚舎から慶應大学に進学するという親リッチの王道ルートをたどった岸本泰史さん(40代、仮名)。現在は、ある大手化学メーカーのグループ会社の平社員として、年に600万円ほどの収入を得ている。

 そんな岸本さんが、本業とは別に破格の配当金を得ているのはなぜか。それは、この大手メーカーを一から立ち上げたのが彼の曽祖父であり、彼の父もかつて同社の社長の座に就いていたことがある、創業者の一族だからだ。

 岸本さん自身も、20代のときに株式を生前贈与してもらっているが、その時価総額は100億円近くに及んでいるという。資産として十分なものはあるが、それでも仕事を辞めないのは、「働くことが大事」と曽祖父や両親から教えられてきたためだ。

 岸本さんには、別のグループ会社で働いている兄がいる。その兄が跡継ぎという立場をはっきりと意識していて、親リッチの家系を残していく素地は整っているという。自分は後継者ではないと語る岸本さんは、「自分自身のためのお金はもう十分。社会やグループ会社のためにお金を使いたい」(岸本さん)という考えで働き続けている。

 岸本さんとは違い、親リッチを後継者として育成することに失敗してしまい、家族の話がタブーになる場合も多い。

 例えば、「ある大きなクリニックを持っていた開業医が、自分の息子をレベルの高い高校に“裏口入学”させた。すると、周囲の学力に付いていけずに落ちこぼれて、3回浪人しても医科大学に入ることができずに薬剤師となった。だが薬剤師では医療法人は継げないので、クリニックを数年前に企業に売却してしまった」(40代、親リッチ)というような事例だ。

 前述の通り、親リッチの多くは自身の教育に対して親から多額の投資をしてもらってきた存在だ。だが、こうした事例から分かる通り、親リッチに対する過度な援助が必ずしも奏功するわけではない。

 一方で、事業承継でうまくいっている親リッチの特徴は、「家族仲が良いこと」(宮本氏)。この家族仲は、親リッチ本人だけでなく「一家全体でつくっている」(同)ものだという。

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