富裕層にとって最大の難敵といえば、税務当局に他ならない。国税庁はこの数年間、海外への税逃れを防ぐべく、さまざまな策を講じている。特集「富裕層のカネ・節税」の#12では、税から逃れる者と追う者の終わることのない「いたちごっこ」の最新事情をお届けする。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
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国税が手にした“最恐”の富裕層包囲網
「必要な道具はかなり拡充された。今後はそれを使いこなせる人材の育成と、分析の精度を高めるためのシステム対応を進めていくことになる」
東京・霞が関の国税庁幹部が言う「道具」とは、富裕層マネーを捕捉すべく近年続々と導入されたさまざまな制度のことだ。
例えば2014年に施行された「国外財産調書」制度により、預金や有価証券、不動産など5000万円超の国外財産を保有する個人は、その内容を毎年3月までに提出しなければならなくなった。提出件数は年々増えており、17年分は9551件、国外財産の総額は3兆6662億円に上る。
他にも100万円を超える国外との送受金について金融機関が提出する「国外送金等調書」、所得2000万円超かつ総資産3億円以上、または有価証券等1億円以上を保有する個人に提出を義務付ける「財産債務調書」といった各種制度により、富裕層の資産を“丸裸”にする仕組みは確実に整いつつある。