景気や物価の安定を図るはずのマクロ政策だが、政権の思惑や財務省・日本銀行の利害が錯綜する中でバブルや金融危機を生み、「デフレ脱却」にもてこずってきた。大型経済対策は「失敗」を繰り返すことにならないか。特集「財政膨張」(全5回)の第3章では歴史に学ぶべく、マクロ政策「失敗の40年」を検証する。
(1)90年代 金融危機を生んだ失敗
場当たり的な財政政策
「空吹かし」と「緊縮」
「外には一切言えないが、隠れた狙いは金融機関のバックアップです」。バブル崩壊の1992年1月、日本銀行支店長会議で三重野康総裁(当時)がこう切り出すと、会議の空気がピンと張り詰めた。前年12月末、予算編成直後という異例の時期に実施されたバブル崩壊から3回目の利下げの主眼は、銀行支援と貸し渋り対策にあった。
会議に出された「対外秘」の資料には、金融機関に申告させて初めてまとめた不良債権の深刻な実態が記されていた。