バブルの様相を呈する不動産投資市場。では、投資用不動産を扱う企業の経営者の目にはどのように映っているのか。調整局面はいつ来るのか。特集「バブル再来! 不動産投資」(全5回)の第4回では、不動産投資関連で代表的な上場企業である、サムティの小川靖展社長とビーロットの宮内誠社長の2人に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)
サムティ 小川靖展社長インタビュー
「マンションだけでは食っていけない。
だからホテルもオフィスもやる」
リートと私募ファンドに販売
海外も日本の安定ぶりに注目
――御社はどのような投資用物件を販売しているのでしょうか。
当社は区分売り(部屋ごとの販売)ではなく一棟売りがメイン。1R~1LDKの、小さくて5億~6億円、大きくて20億~30億円の賃貸マンションを造っています。それを当社がスポンサーの不動産投資信託(リート)であるサムティ・レジデンシャル投資法人に売却する。それが、当社のメインのビジネスモデルです。
――リートはどのくらいの規模でしょうか。
リートには年間300億円ほどを売却しています。規模の拡大に伴い、リートが買える物件の範囲が広がり、これまでの取得価格の合計は1000億円を超えました。
その次の売却先が、少数の機関投資家から資金を募ったファンド、いわゆる私募ファンドになります。ここは外資系が中心で投資の意欲は旺盛です。「期待利回りが低くても安定した利回りをきっちり出してほしい」というニーズがすごく強いですね。
――現在の不動産投資市場をどのように分析していますか。
国内の不動産投資市場は低金利のおかげで堅調です。
ある投資家がリーマンショック前後の世界の不動産動向を調べたところ、「リーマンショック後は他の国と比べて日本の家賃の下落幅が最も小さかった」という話を聞いたことがあります。
たとえ利回りが3~4%だったとしても、世界の景気が先行き不安になるほど日本の賃貸マンションへの投資にうまみがあると、海外投資家も判断しているようです。
大崩れの要因は見当たらないが
人口減少で投資マーケットは縮小
――昨今の市場はバブル化しているといわれています。リーマンショック前と比較して、現在の過熱ぶりをどう感じていますか。
リーマンショック前と比べると、現在は明らかにプレーヤー(投資家)の中身が変わりました。当時は外資系ファンドが高いレバレッジをかけて投機的に売買する、いわゆる「転売型」が多かったのですが、今はそういうケースはほぼありません。
例えば米国のファンドから資金調達するにしても、その先をたどると実際には大学のお金を運用しており、10年間は資金面で問題ないといった話も聞きます。
また、日本企業の業績も総じて悪くはありません。とはいえ、先行きの不透明感から本業への再投資に慎重な面もあります。サービス業などは、資金があっても店舗をむやみに増やすわけにはいかず、人件費に充てるくらいしかなかったりします。
その結果、不動産業以外の企業が、余った資金を運用するために不動産へ投資するという機会がすごく増えています。
あとは機関投資家、例えば生命保険会社が不動産をポートフォリオに組み入れたりもしています。リート市場も調達環境が良く安定しているため、今のところ不動産投資市場が大崩れする要因が見当たりません。
――しかし、いつか踊り場を迎えるときが来るでしょうし、予想もしない金融危機などで経済不況になる可能性は捨て切れません。
その点で言えば、ローンの組み方が変わったのも大きいですね。
リーマンショック前は、不動産購入時の借入金の割合(ローン・トゥ・ヴァリュー・レシオ)だけにこだわっていました。今は物件単体で、税引き後のキャッシュと減価償却で借金を返せる範囲内でお金が回るようにローンを組んでいます。
いつかは調整局面が来て、耐える時期に突入するでしょう。もしかしたら、明日には融資が打ち切りになるかもしれない。そんな事態に備えて、収益物件からのキャッシュが手元に残る形にして資金不足に陥らないようにしています。
賃貸マンションの投資マーケットは、足元が良くても、10年後、20年後を考えると、人口減少で徐々に賃貸需要が落ちて縮小していくと思います。
そのため、投資用マンションという商品だけでわれわれが食っていくのは無理がありますから、ホテルやオフィスの開発にも乗り出したわけです。今年5月には大和証券と提携し、大型物件への取り組みも始めました。今後は、総事業費で100億円を超える物件を複数手掛けていく予定です。
エンドユーザーに売るのは、営業マンの数も投資家の数も維持するのがすごく大変です。それよりも、もう一つ上の富裕層を狙ってプロ対プロで取引した方が、トラブルも少なくて効率的だと思います。
当社の出口戦略は幾つかあるので、今後の成長の鍵はやはり開発用地をどう仕入れていくかに尽きます。