外国人観光客を当て込んで投資マネーがなだれ込み、ホテルが大量に建てられた。その反動が宿泊料の値下げ合戦を引き起こした。特集「不動産・開発 危うい狂乱」の#11は、ホテル乱造の末路を描く。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)
ホテルを大量供給したのに
リピート客がスルー
「価格が高過ぎるね」。買い手として当てにしていた投資家から返ってきた一言に、不動産開発業者はがっくりと肩を落とした。訪日外国人旅行客(インバウンド)の増加を当て込んだ建て売りビジネスホテルが、思うように売れなくなった。
第2次安倍政権による観光産業振興でインバウンドが増えたことを受け、ホテル開発が大ブームとなった。特にインバウンドが多い京都と大阪、観光の起点となる東京で乱立し、さらに全国へホテルの建設ラッシュが波及した。
賃貸マンションで入居者が増えれば家賃収入が増えるのと同様、ホテルも宿泊者が増えて稼働率が上がれば宿泊料収入による投資効果が見込める。そのため、投資目的で新築、中古共に投資家が一棟丸ごとホテルを購入するケースが増えていった。
ところが2018年ごろから実需に異変が起こり始めた。地震や台風などの自然災害や日韓問題などを受けて、インバウンドの伸びにブレーキがかかったのだ。
単発の事象が影響しているだけではない。「本質的、構造的な問題がある」とジョーンズ ラング ラサールの沢柳知彦執行役員ホテルズ&ホスピタリティ事業部長は言う。
「インバウンドのマーケットを支えてきた中国、韓国、台湾、香港のうち、韓国、台湾、香港はリピート客比率が7割を超え、同じようなペースでは伸びにくくなってきている」(沢柳氏)のである。リピート客の中にはすでに訪れた大阪や京都などをスルーする者もいる。ホテルが大量供給されたのに、肝心の客足が遠のいたのだ。