文政権は国会議員選挙で
勝つことを優先した

 対応のマズさを端的に示したのは、政策の優先順位を誤ったことだった。

 文大統領は13日、大企業のトップを招いた席で、「コロナは近く終息するだろう」として通常の企業活動を続けるよう求めた。さらに21日には、消費業界関係者を招いた席でも「防疫と経済の2匹のウサギをどちらも捕らえなければならない」として、「ツートラック」戦略を改めて強調した。

 文大統領の頭の中には、世界中のリーダーが考えている「防疫が最優先で経済はその次」という優先順位は存在しなかった。これは4月の国会議員選挙において、文政権の経済運営が最も重要な争点になるとの意識があったからだろう。

 その上で文大統領は、「一部のメディアが過度に恐怖や不安を大きくして経済心理や消費心理を極度に萎縮させている」とメディアへの批判を強めた。

 政権幹部も新型肺炎に対する危機感のない発言や行動が目立った。

 集団感染につながる懸念のある集団行事は延期すべきではないかとの専門家の警告にもかかわらず、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は「外食産業(自営業者)を助ける気持ちで外部の食堂を利用せよ」とまで言ったと伝えられている。

 また朴凌厚(パク・ヌンフ)保健福祉部長官は、数十人の感染者が確認された直後の19日夜、KBSとのインタビューで「地域社会で感染が拡大する時期が来るということを“実は”予測していた」「予想していたことなのでそれほど慌てていない」と語っていたと中央日報は報じている。

 そのような予測をしていたのなら、大統領やその側近の発言や行動を、国民はどう読み取ればよかったのか。保健福祉部長官は事実を大統領に報告していなかったというのか。

 青瓦台は感染者が少なかった時期から、前もってヘリコプターを動員して空中防疫していたし、青瓦台の進入路も徹底して防疫をしていたようだ。こうした対策をより強化して、まん延を防ぐ努力をどうしてもっと続けなかったのだろうか。

 文大統領が言うように「防疫は重要」で「経済も重要」であることは議論の余地がない。特に文大統領にとって今年の国会議員選挙に勝つためには経済を犠牲にはできない。しかし、そのため防疫がおろそかになって感染拡大が始まってしまうと、拡大を抑制するのはますます困難になる。結果として経済の被る犠牲は、当初から防疫を最優先にするよりはるかに大きくなることをなぜ考えなかったのか。新型肺炎の抑制は「危機管理」の問題であり、選挙対策より優先されるべき問題であるはずだ。

 国会議員選挙に意識があるにしても、まず新型肺炎を落ち着かせた後、経済の回復を図るべきである。順序が逆になったところに現在の悲惨な状況がある。