安倍晋三首相(右)と加藤勝信厚生労働相政府の新型コロナウイルス対策が信用できないのはなぜか。新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(右)。左は加藤勝信厚生労働相 Photo:JIJI

新型コロナウイルス対策
の不手際は「人災」なのか

 2月25日に政府が「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を発表しました。しかし、ほぼすべてのメディアが批判しているように、その前日に発表された専門家会議の「見解」が冒頭で「これから1~2週間が急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際」という強烈な危機感を示しているのに比べると、「基本方針」に盛り込まれた対策はすでに言われていることばかり(マスク着用や手洗い、テレワークや時差出勤、軽度な場合の自宅での安静・療養など)でした。

 それどころか、むしろ対策としては逆行している感が否めないもの(PCR検査は肺炎患者の治療に必要な確定診断のために移行など)もあるくらいです。イベントの開催や学校の臨時休校などの可否について、事業者や自治体に判断を丸投げしていることに至っては、首を傾げざるを得ません。クルーズ船への対応における、政府の数々の不手際の記憶が鮮明な中では、政府のコロナウィルス対策への不信感は高まるばかりです。

 それでは、なぜ政府の対策に全幅の信頼を置けないのでしょうか。私は、厚労省の過ちが積み重なった結果だと思っています。言葉を選ばずに言えば、コロナウイルスへの対応をめぐるさまざまな混乱は、厚労省が引き起こした人災と言っても過言ではないのです。

「基本方針」を決定した新型コロナウイルス感染症対策本部は官邸に設置され、また専門家会議は内閣官房に設置されています。しかし、感染症対策は厚労省の所掌ですので、これら会議体の運営や文書の原案作成などは厚労省から内閣官房への出向者が主に担っているはずです。そして、厚労省が主体となって対策が立案される中で、厚労省は3つの大きな過ちを犯していると考えられます。