「責任を負いたくない」
という小役人的な意識

 そして第三の過ちは、役所の常ではあるのですが、今のような緊急事態にもかかわらず何かあった場合の全責任を負いたくないという、厚労省の意識がありありとうかがえることです。

「基本方針」を見ると、イベントの開催については事業者に開催の必要性を検討するよう要請するだけ、学校を休校にするかどうかについては適切な実施を自治体に要請するだけ、といった具合に、判断の責任を他人に押し付けています。

 極めつきは「基本方針」の最後で、要約すると「地域ごとの対策については、厚労省が考え方を示した上で、地方自治体が厚労省と相談しつつ判断する」と明記しています。

 これほどひどい責任転嫁、責任逃れはないと思います。当たり前の話ですが、コロナウイルスの感染を防ぐことが政策目的である以上、イベントの開催や学校の休校などの措置については、本来は専門家の科学的な知見に基づいて、政府(厚労省)が明確な判断、または少なくとも判断の根拠となるような基準を示すべきです。感染症に関する知見のない民間や地方が、自らの事情だけで決めるような話ではありません。

 学校の休校を例に取れば、北海道は全小中学校を休校とすることにしました。個人的には、感染者が出た市町村単位ならともかく、北海道全体というのは過剰な気がしますが、おそらく政府が明確な見解を示さないので、やむを得ず感染のリスクを最小化できる措置を選んだのだろうと思います。

 しかし、政府が専門家の科学的な知見に基づく明確な判断を示さない中では、このようにもしかしたら過剰な判断でも、それが前例となって多くのところが追随することになり、結果的に経済や社会に大きな悪影響を与えかねません。