政府が信用できない背景に
厚労省が犯した3つの過ち
第一の過ちは、最大のものでもありますが、厚労省内で対策が検討される過程で、専門家の知見がほぼ確実に活かされていないだろうということです。今回のコロナウイルスのような自然界の新たな脅威に対応するには、その分野の専門家の科学的な見地からの知見をベースに対策を立案すべきですが、おそらくそうした当然の仕組みが厚労省内では機能していないのです。
政府内での感染症対策の専門家は国立感染症研究所ですが、私は個人的に、クルーズ船への対応の段階から、感染症研究所が純粋に科学的な見地からの知見を提供し、厚労省がそれを基に対策を講じていたとは思えませんでした。
たとえば、クルーズ船の乗客のうち陰性と判定された人たちを下船させた際、米国はおそらく感染症に関する世界の最高権威でもあるCDCの知見に基づき、陰性と判定された後の船内での感染の可能性を考え、自国民をチャーター機で帰国させた後も2週間隔離しました。他国もそれに倣っています。ところが日本だけは、下船後に公共交通機関を使って帰宅させました。
この問題について国会で問われたとき、加藤厚労相は「国立感染症研究所から、14日間管理されて陰性で健康確認が出ていれば公共交通機関を使ってもいいと示唆があり、最終的に判断した」と答弁しています。
では、なぜ感染症研究所は米国のCDCと異なる判断をしたのでしょうか。可能性として考えられるのは、感染症研究所の仕事は研究がメインで、CDCのように緊急時対応に慣れていないので非現実的な判断をしてしまったか、感染症研究所の人たちが厚労省の事務方の意向を忖度して、科学的見地よりも実務的な観点を優先したかのどちらかです。
ちなみに、私は後者の可能性の方が大きいのではと思っています。感染症研究所は独立した機関ではなく厚労省の下部組織ですので、予算や業務内容などについて常に厚労省本省の事務方の意向を気にしながら仕事をする習性が、染み付いていると考えられるからです。