新型コロナウイルスの感染が拡大する中、突如として全国の学校の休校を要請した安倍晋三首相。2009年の新型インフルエンザ蔓延(まんえん)時に危機対策を率い、今回政府の専門家会議の一員にも加わる感染症と公衆衛生の専門家である岡部信彦・川崎市健康安全研究所長に、政府決定の評価と今後の対策の見通しについて聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
感染対策は専門家会議で決める仕組みになっていない
──安倍総理が3月2日からの全国の小学校・中学校・高校の休校を要請しました。これは政府のコロナウイルス専門家会議で検討された内容ですか。
そもそも諮問されておらず、こちらから提言もしていません。
将来の可能性も含み議論したということすら、ない。政府は「専門家会議の答申を受けて方針を決めるルールにはなっていない」という言い分なのでしょうね。専門家がなんでも知っているわけではないけれど、医学的なことは相談してくれた方が向こうも楽じゃないかと思うんですけどね。
──いままではどんな話し合いをされていたのですか。
だいたい、専門家会議が立ち上がったのもつい最近ですし、これまでも3回しか開催されていない。明日(29日)が4回目の開催ですね。僕は2009年の新型インフルエンザのときも専門家会議に入っていましたが、あれは比較的早く立ち上がって、さまざまな対策はそこで議論して決めることになっていました。今回はそうではない。
2月24日に専門家会議が出した声明は、これからの行動計画についてかみ砕いたもので、あれが委員の共通の考え方です。その中で「不特定多数の見知らぬ人が、換気が悪い狭いところに長時間留まる、ということは感染リスクを高めるので控えてほしい」と言っています。大体想像がつきますよね。さらに、この対象となっているのは若者を含め大人の集団で、中でもハイリスクなのは高齢者である、特に先ほどの感染リスクの高い環境に病人が来てもらったら困るので、具合の悪い人はそういったところに来ないでほしい、というのが強調点です。そもそも、今回のような全国全学校閉鎖ということには、声明の中でも触れていないんです。