──新型インフルの過去の知見が生きていない。

 怖がらないでください、と言っている政治家が一番怖がっている。逆にこうしたことが不安材料となり、医療崩壊などにつながります。僕は医療崩壊は絶対やっちゃいけないという立場でいろいろなところで説明していますが、でも医療は守ったけど社会が崩壊したということになったら取り返しが付かないわけですよ。崩壊してその回復に10年かかり、その間暗い気持ちで過ごさなければならないということになったら考えものですよね。

岡部信彦新型コロナウィルス感染症対策専門家会議委員・川崎市健康安全研究所長Photo:J.T./Photocompany

──学校休校については、自治体ごとの「工夫」を求めるという文科相の発言もありました。

 発症が一例も出ていない自治体と、数例出た自治体、若者で出た自治体、お年寄りで出た自治体でそれぞれやり方は違うんです。人口密度によっても違う。小さい自治体などで自治体が判断できない場合は、国に相談すればいい。

 それから、休校などのような行動制限をする対策を決めるときには、その規制をどの条件で解除するかということを考えることも必要です。効果がないから、効果が出て良くなってきたから、それから、蔓延しきってしまったからという場合もあるでしょう。学校を休校にしても、他で蔓延してお父さんが感染して自宅にいたら意味がないわけです。

──どうしたら終息するのでしょうか。

 この病気がSARSのように消えるのか、居座ってしまうのかがまだ読めません。MERSのような感染力は高くないけど致死率が高い病気という可能性は低くなった。ただ、軽い状態で居座り続ける病気ということになると、毎年冬にコロナとインフルエンザが両方はやるということになる。そうならないように警戒をしているのであって、日本の総人口全てが危機にさらされているという話ではありません。

──全世界的に、社会不安が強まりつつあります。

 日本も含め世界が浮き足立ってる。今のパターンは「かかるとみんな危なくて、みんな肺炎になって隔離されちゃって、ICUに入って命に係わる」というイメージですよね。でも今やるべきなのは、8~9割が治るのであれば、残りの1~2割にリソースや対策を集中するということです。