新型インフルの対策文書には「専門家の意見を入れること。そして行動制限をきつめにするのは仕方がないけれど、制限を見直すときは、厳しくするだけでなく解除する見直しもちゃんとやるように」と、書き入れています。取るべき行動計画が書き込まれていて、やることは列挙してあるけれど、これらを全部やるべきだ、というふうにはなっておらず、状況をよく見て判断してロジカルに決めること、としました。すべてにエビデンスがあるわけではないので、そこは経験で判断することになりますが、どうしてその判断をしたかということは示さなければならない。

 専門家会議ができた時から「新型インフルの時に作成した行動計画を見てくれ、国でもそうした行動計画を作るべきだ」とずっと言い続けてきました。現に川崎市はこれに従って行動計画を作っているのです。

──政府の一連の新コロナウイルス対策が、何を達成しようとしているのかが示されていないように感じます。

 そのとおりです。目の前のことに対策を取らなければならないのはわかる。でも、この病気はだんだんその正体が見えてきていて、重症度を下げ死亡者を減らすためにはどうすればいいか道筋が見えつつある。重症度と感染力で見ると、感染力はわりに強いがインフルエンザ並み。重症化率はインフルより悪そうで、臨床の先生たちから言わせると肺炎になるとインフルの肺炎よりも悪化しやすい、などが見えています。

 そして対策を考えるのには、こうしたウイルスの特性を考えて、大まかでいいから少なくとも大中小くらいの数字が出てこないといけないわけです。致命率がこのくらいで高いから、強い方法を取らなければならない。中くらいなので亡くなる方もおられるかもしれないけど、このくらいの対策でいいだろう。低いので放っておいていい、などのように。今回は「一番大事な指標となる致死率は1%前後なので、このくらいのことをやりましょう、8割は治ります」とはっきり言わないと、暗い話ばかりで社会全体が鬱状態になりますよね。