──学校の一斉休校は感染拡大防止に意味があるのでしょうか。

 感染を食い止める効果が皆無かと問われると「皆無ではない」という答えになります。学校で感染者が出たとすれば、閉鎖すればそこから患者が知らずにほかの人にうつす連鎖は防げる。インフルエンザやはしかでも学級閉鎖はやりますよね。

 ただし、新コロナウイルスの病態と感染者の年齢層と危険率を考えたらどうか。いまのところ子どもたちの発症は非常に少ない。中国でも大人の感染者ばかりで、小中学校で多発したという報告はなく、発症した子どもでも重症者がいない。その状況でこうした一律の学校閉鎖をすることをどう考えるか、これが一点です。

 さらに、感染の傾向には地域差があります。学校で発生している北海道は別の議論ですが、東北6県はいまのところ発症者がいない。九州でも全県では出ていない。そのなかで、全国で一斉にやっていいのかどうか。感染者がいる北海道と神戸と鹿児島の状況は当然ながら違う。横浜でも東京でも出ている感染者がなぜか川崎では出ていないのです。自治体によって、何が最適なのか考える時間が必要です。

 そして、この新コロナウイルスという病気自体の特性を考える必要があります。例えばこれがエボラ出血熱のように致死率50%などのものであれば、「ウイルスの潜伏期間は家から出ないでください」という処置が重要なのはわかる。しかし、今回の場合発症者の80%は軽症で済んでいます。致死率は中国で2%、武漢を除けば1%です。インフルエンザが0.1%であることを考えれば、無視できない病気であることは否定できません。感染が広がればいくら低い割合でも亡くなる方が増えてきますから。ただし、学校を一律全校休校とするほどの対処は、果たしてどうなのか、と。

 前々からこういう話を検討していて、「流行がこのくらい広がり患者がこのくらいの数になったら実施しよう。その際保護者の仕事や給食のやりくりをどうするか、学校の先生がその間どういうことをやらなければならないか。共働きが圧倒的に多い生徒の父母の仕事をどうするのか」などの話し合いをしておくことがあれば別の話でした。今回の措置にはそのくらいの用意は必要だったはずです。