第一生命の稲垣社長に聞く、コロナ禍で運用環境激変でも乗り切れる理由

2010年4月1日に相互会社から株式会社に転じた第一生命保険。今期は新型コロナウイルスに端を発する株式市場や金利低下によって大幅減益を余儀なくされるが、この10年を振り返れば、事業の多様化が成果を上げたといえる。これらについて、稲垣精二社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

コロナショックの影響で
前期比92%減の大幅減益

――第一生命ホールディングスは4月1日、2020年3月期の連結純利益が前期比92%減の170億円になりそうだと発表しましたが、今回の下方修正をどのように捉えていますか。

 今回の2020年3月期の経常利益、当期純利益の予想を修正した理由は大きく2点あります。まず1点目は、海外の金利低下を受けて、第一フロンティア生命保険のMVA(市場価格調整)に係る責任準備金の繰り入れ負担が1605億円増える見込みであること。2点目は、株価低下を受けて、持ち分法適用会社の資産運用会社である英ジャナス・ヘンダーソン株式の持分法のれんの一括償却によるものです。これらはともに、一過性の評価性損益によるものです。

 一方、キャッシュベースの実質利益であるグループ修正利益については、期初予想の2400億円を達成できる見込みで、20年3月期の1株あたり株主配当は、前年から4円増配予想の62円を維持します。

第一生命稲垣社長第一生命ホールディングスの稲垣精二社長 Photo by Masaki Nakamura

――新型コロナウイルスが及ぼす、20年度以降の事業への影響をどう考えていますか。

 コロナウイルス感染拡大の影響は、営業面、保険金等の支払い面、資産運用面に及ぶと想定されますが、いずれも足元では限定的です。一方で、コロナウイルス感染拡大等の影響で日々変動する状況には、今後も注視する必要があると考えています。

 営業面については、顧客と社員の健康状態に最大限配慮した活動を行うことが必須なため、感染拡大がこのまま継続し続ければ事業運営に一定の影響が生じる可能性はあると考えています。

 保険金等の支払いについては、今後の死亡者数や入院者数の動向によりますが、現時点では、保険契約として想定している死亡率等の前提を大きく変えるほどの状況は想定されにくいと考えています。