
プルデンシャル生命保険で発覚した金銭搾取事件は、単なる一社の不祥事ではない。四半世紀にわたり業界を注視してきた身としては、今回の事件を「構造的要因が生んだ必然」だと感じている。「ライフプランナーこそが最高の商品」という理念の裏側で、プロの営業職員を心理的極限へと追い込むゆがんだ「報酬体系」の闇とは何か。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、大量採用・大量離職に依存し、使い捨てを前提とした生保業界のビジネスモデルの限界について論じていく。(保険ジャーナリスト 森田直子)
プルデンシャルで大量の金銭詐取事案
明らかとなった報酬体系の限界
外資系生保の代表格として知られるプルデンシャル生命保険で発覚した、営業職員(元社員含む)による大規模な金銭搾取事案。被害総額や手口の悪質さもさることながら、業界に衝撃を与えたのは、同社が誇る「質の高いコンサルティング」の裏側で、長期間にわたり不正が見過ごされてきたという事実である。
同社は「ライフプランナーこそが最高の商品」と高く持ち上げ、一時は業界の理想像といわれた時期もある。しかしその裏には、他社よりもはるかに過酷な生存競争という現実があった。理念で人を引き付けながら構造によって現場を追い詰めた、その罪は重い。事実、同社の記者会見は、世間から厳しい批判を浴びる結果となった。
しかし、この事件をプルデンシャルだけの問題として片付けるべきではない。
筆者は四半世紀にわたり、生保会社に勤める営業職員を取り巻く環境を注視してきたが、今回の不祥事は、いわば四半世紀以上続く業界の構造的要因が生んだ「必然の結果」であると感じている。
なぜ、顧客から厚い信頼を得ていたはずのプロの営業職員が、一線を越えてしまったのか。
そこには、保険業界が長年にわたり改革を避けてきた「制度上のゆがみ」が存在する。営業職員の特殊な報酬体系には、真面目に働く人間を心理的な極限状態へと追い込みかねない、一般の消費者には理解し難い仕組みが隠されているのだ。
そこで次ページでは、長年放置されてきた「生保会社の報酬体系」の四つの問題を示し、生保業界全体の問題とすべき理由を明らかにする。







