世界経済ロックダウン
Photo:Marco Cantile/gettyimages

新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受け、欧州諸国は金融・財政政策を矢継ぎ早に講じている。その結果、膨らんだ財政赤字はコロナ危機が終息しても残る。国債の信用は悪化し、国債を保有する銀行の財務体質は劣化する。緊急連載『世界経済ロックダウン』の#10では、第一生命経済研究所主席コノミストの田中理氏に、悪化する欧州諸国の財政の現状と、銀行部門が脆弱なイタリアで特に懸念される政府と銀行の危機の連鎖について解説してもらった。

相次ぐ大規模金融・財政政策
EUは財政規律適用を一時停止

 新型コロナウイルスの脅威が欧州を襲っている。多くの欧州諸国が、外出・移動制限、大規模集会やイベントの禁止、生活必需品を除く小売店舗の閉鎖、学校の休校など、社会的な距離を保つ政策を全面的に実行している。

 感染封じ込めに向けたこうした厳しい措置は、人や物の自由な移動を制限し、経済活動や国民生活を犠牲にせざるを得ない。日次や週次のデータが捕捉可能な都市交通量や電力需要などからは、3月中旬以降の欧州経済が一瞬にして10~20%程度の急降下に見舞われている可能性を示唆する。

 社会隔離の間の国民生活への打撃を少しでも食い止めようと、欧州の政策当局は相次いで大規模な財政出動や金融緩和策を打ち出している。

 各国は医療関連の歳出拡大、資金繰りが悪化した企業への信用供与や公的保障、経営が悪化した企業への公的資金注入、時短労働者に対する所得補填、失業給付の拡充、納税や公共料金支払いの一時猶予などの対策を発表している。

 ユーロ圏全体ではGDP(国内総生産)比で2%相当の追加的な財政出動、10%相当の流動性支援を約束している。あのドイツまでもが財政均衡ルールを一時凍結し、大幅な財政出動に踏み切った。それほど経済活動を全面的に停止する影響は大きい。

 EU(欧州連合)は厳しい財政規律で知られるが、コロナ危機対応の一環で、財政規律の適用を一時的に停止することを決定した。これにより財政赤字の拡大や公的債務の膨張はひとまず規律違反を問われないが、深刻な景気後退と相まって各国の債務返済能力の悪化は避けられない。