荒唐無稽な数字などでは全然ありません。起こりうる事態だと思いますし、この勢いなら10万人で抑えられればいいほうかもしれません。

 ニューヨークの多くの病院では今、建物の隣にトレーラーが停まっています。何が入っているかというと、遺体です。どこも霊安室がいっぱいになりつつあるので。しかも非常に悲しいことに、感染力が高いので、その遺体を家族に戻してあげられない。トレーラーで冷やして保存した後は、おそらくすべて焼却することになります。米国では火葬した後の灰を墓に入れる文化はないので、遺族には「火葬しました」という通知が来るだけだと思います。

 日本もこのまま行ったら、人口が大きく減るおそれがあります。私自身、実家が東京なので、今すごく心配です。友だちも、昔の同僚もたくさん東京にいます。彼らが無事でいられるかどうか。

 そして私、すごく疑問に思うのです。どうして日本は「人命が最優先」とならないのか。どうして経済が優先されてしまうのか。衛星放送のニュースを見ると、企業の決算期が終わってから非常事態宣言を出すほうがいいだとか、論点がものすごくずれているように感じます。薬害エイズでも非加熱製剤の危険性が分かっていながら、製薬業界は人命より経済的利益を優先しましたよね。その判断がどれだけ悲惨な結末をもたらしたか。それを思い出せば、日本政府が今下すべき判断は明らかだと思います。

斎藤 孝(さいとう・たかし)/東京都生まれ。米ニュージャージー州大学病院で感染症指導医。総合商社の米国駐在員を経て、米国医科大学院に進学。卒業後、ニューヨークで内科レジデント、感染症フェローとしてエイズや結核などの感染症患者の治療に従事。20年1月から現職。