改めて、提言する。

 東京都、日本政府、そして東京2020組織委員会は、いまこの時点で、都民、国民に「東京オリンピックの1年後の開催を歓迎するか」を問うべきだ。そして、大いに議論すべきだ。もちろん、出場予定の選手たち、指導者たちの意見や気持ち、現状も聞くべきだろう。その上で、国民が思いを新たにし、どうすべきかの方向性を共有してこそ、国民的な事業といえるのではないだろうか。

 実施にしても中止にしても、それをすることで得られることは大きいはずだ。そして、新型コロナウイルスが収束した後のスポーツ界が、どんな価値観を持ち、何を大事に運営されるべきかの展望も見えてくると期待する。

3000億円の追加費用は
「無駄」と断言できる理由

 私は、これだけ大変な状況が続くいま、「1年後の開催は無理だろう」「早く中止を決めるべきだ」と感じている。

 1年後のオリンピックの準備より、いまは「命と健康を守ること」「社会の平和を取り戻すこと」が何より緊急のテーマだ。そのために、いまあるものはすべて新型コロナウイルス対策に注力すべきだ。

 例えば、オリンピックのために建設・整備した施設は、感染者や感染防止、仮設の医療施設として使えるだろう。オリンピック村だけでなく、新国立競技場や他の競技場も転用すれば大いに役立つはずだ。「1年後にオリンピックに使う」と考えるから使用が躊躇されるが、その可能性をゼロにしたなら、「さあ、どう使えるか」と発想も転換できるだろう。そして、本来はオリンピックのために造った施設が、運よく新型コロナウイルス対策に大きな役割を果たしたとなれば、莫大な費用も先行投資だったと理解される可能性もある。

 3000億円とされる追加費用に関しても、「無駄だ」と断言する。

 安倍首相や当事者たちは、これまでに投資した1兆円以上とされる予算を無駄にしないためにも「何とかオリンピックを実施し、回収したい」のだろう。だが、それはもう雲散霧消している。