マラソンは代表変えず、柔道は再選考へ
競技で異なる延期決定後の対応
東京オリンピックの延期が決まり、にわかに関心が高まっているのが代表選手の選考だ。すでに出場が決まっている選手は、1年後の開催でもそのまま出場できるのか? それとも選考をやり直すのか?
男女各3人、計6人の代表が決定している陸上マラソンは、再選考しない方針を瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーが明言した。卓球も、1月に決定していた代表選手の男女6人を変える予定はなく、このメンバーを強化することに力を注ぐと表明している。
一方、柔道について山下泰裕JOC会長は、選考やり直しの可能性を示唆し、その場合は一度決まった選手が「幻の代表」になる可能性もあると発言した。
競技の特性やそれぞれの事情も異なるからだろう。
マラソンはいま、世界のトップレベルと距離がある。3人目の代表に大迫傑が決まった直後、「今の力ではメダルは難しい」と瀬古氏が冷静なコメントを出したことからもわかるとおり、東京大会でのメダル獲得の可能性は決して高くない。それもあって、2年半かけて選んだ新方式による代表をそのまま送りたい気持ちが強いのだろう。
対して、柔道は違う。できれば全種目で金メダルを獲りたい。全部が無理でも出来る限り多く獲りたい。そのため、大会が開かれる時点での最強選手を代表にしたい――。厳しく勝利を求めたら、それも当然の判断だ。
具体的な階級でいえば、最も悩ましいのは男子100キロ超級だろう。2大会連続でメダル獲得している原沢久喜選手を代表に選んだ。最強王者と呼ばれるリネール(フランス)が君臨するため、「金メダルが無理でも確実にメダルを獲ってほしい」という思惑がある。
だが、代表選考直前の大会で、若手の影浦心選手がその最強王者を破る大殊勲を立てた。選ぶ側は大いに迷っただろうが、影浦選手の実績はその一勝だけで、過去1年間、主な国際大会での優勝経験が乏しい。結局、安定性と実績から原沢選手に託した格好だが、1年の強化期間が与えられたなら、影浦選手を鍛えて金メダルを獲りに行く、と方針を変えるのも当然だ。まして、ベテランになったリネールは1年後、年齢的にも盤石な強さが揺らぐ可能性もある。