とある美術教師による初著書にもかかわらず、各界のオピニオンリーダーらやメディアから絶賛され、発売3ヵ月で5万部超という異例のヒット作となった『13歳からのアート思考』。
先行きが不透明な時代だからこそ知っておきたい「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、「自分なりの答え」を生み出す思考法とは? 同書より一部を抜粋してお届けする。
一風変わった描き方の先にあるもの
前回は、第一次世界大戦の直前にアメリカで生まれ、ニューヨークで活動したアーティスト、ジャクソン・ポロックの《ナンバー1A》という作品をご紹介しました。彼の作品は、今日に至るアートの歴史のなかでも高く評価されており、同時期に同じ手法で制作された《ナンバー17A》は、歴代5番目の超高額で取引されたアート作品としても知られています※。
しかし、実際の作品をご覧いただくと、ほとんどの人はきっと「こんなぐちゃぐちゃな絵が高く評価されているなんて……これだからアートの世界はわからないな」と感じると思います。少なくとも、そこまで高価な絵には見えません。
なぜこの絵が高く評価されているのかが気になると思いますが、ひとまずは率直に作品と向き合うために今回も「アウトプット鑑賞」をしていきたいと思います。今回はとくに「この絵がどうやって描かれたか?」という部分にも注目しながら、気づいたことをアウトプットしてみましょう。
美術教師/東京学芸大学個人研究員/アーティスト
東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。東京学芸大学個人研究員として美術教育の研究に励む一方、中学・高校の美術教師として教壇に立つ。「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を、都内公立中学校および東京学芸大学附属国際中等教育学校で展開してきた。生徒たちからは「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と大きな反響を得ている。
彫金家の曾祖父、七宝焼・彫金家の祖母、イラストレーターの父というアーティスト家系に育ち、幼少期からアートに親しむ。自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップ「ひろば100」も企画・開催している。著書に『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』がある。