アパートを建てると相続税の節税になるという話を聞いたことがある人は多いだろう。だが、そのカラクリを知っておかないと、節税のつもりがかえって財産を失う悲惨な末路を迎えることになりかねない。特集『改正相続、もめごと全解決!』第10回では、「節税アパート」の仕組みと落とし穴について解説する。
相続税対策で建てた
アパートが悲惨な末路に
「相続税でお困りじゃありませんか。借金をしてアパートを建てると、これだけ相続税が節税できるんですよ」
横浜市に住む森田弘和さん(仮名・70歳)の元にやって来たのは、あるハウスメーカーの営業マンだ。相続税や収支計画といった、さまざまな試算が書き込まれた資料を見せながら、アパートを建てることのメリットを語っていく。
確かに、自宅以外にも土地は幾つか持っている。相続税は気になるところだった。アパートを建てて、これだけ大きな節税効果が見込めるのは魅力的だ。親身になって相談にも乗ってくれるし、この営業マンの言う通りにアパートを建ててみてもいいだろう。
結局、森田さんは手持ち資金がなかったため、借金をして1億円でアパートを建設した。都心部から電車で45分。駅からはさらに徒歩20分という立地だった。