デンソーはまず自動車「業界」での標準化を推進し、それを基軸に「国際」標準化をめざすことで、最終的にISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)での標準化を実現しようとした。それができれば電子機械業界、流通業界といったほかの一次元シンボルの採用業界でも、二次元シンボルのユーザーを増やしていけると考えたのだ。

◇入念な準備でついに規格の承認へ

 手始めにデンソーの工場にQRコードを導入して好評を得ると、トヨタ自動車グループでの採用を持ちかけた。だが現場・現物・現実の三現主義をモットーとするトヨタでは、紙ベースから離れられない部署もあり、賛否両論であった。

 そこでトヨタへの導入と並行して、当初デジタル伝票の標準化を進めていた日本自動車工業会と日本自動車部品工業会で、QRコードの有用性を認めてもらうことにした。試行錯誤のうえ話は進んだが、自動車業界は海外との取引も多いため、日本以外でもQRコードを使えなければ意味がない。国際標準化にも同時に手をつけることとなった。

 全米自動車産業協会に出向き、まずは北米で標準化することを目標にした。同協会は、アメリカ企業が発明し、デンソーがライバル視していた3つの二次元コードをすでに採用していた。そこでデンソーは、各コードが棲み分けていた、部品マーキングと追跡、一般的使用、高速読み取りのそれぞれの長所を併せ持つものとして、QRコードを推すことにした。

 アメリカの日系自動車関連企業に使用してもらうことで実績を積みながら、国際標準であるISO/IEC標準化を実現させるべく、デンソーは入念な準備を行なった。たとえば海外の主要プリンターメーカーには、QRコードを印刷するためのエンコード用ソフトウェアを無償で提供した。また一般読者にもわかりやすいQRコード読本を、日本語と英語で作成して配布したりもした。

 こうした活動が功を奏し、QRコードの規格はISO/IEC18004として、2000年6月15日に発行された。全米自動車産業協会でも、それに付随して承認を受けることができた。

 この国際標準化が、QRコードの普及を大きく後押ししていく。

◆普及と進化
◇生活場面への広がり

 QRコードの広がりは、最初は生産や流通の現場からだったが、そこから消費者に直接届くまで、それほど時間はかからなかった。パブリックドメイン化したことで、デンソー自身では思いつかなかったQRコードの新用途を、利用者側が発見していったからだ。