ソフト面を磨き上げ、
企業文化に埋め込む
松本:また、経営が進化するためには、経営数字だけでなく、企業風土や従業員のマインドセットといった「ソフト面」の改革も不可欠です。
そこで、我々が中期経営計画で実行施策のトップに掲げたのが、「持続的成長に向けた組織を作る」ということです。これは次の3つから成ります。
【持続的成長に向けた組織を作る】
●尊敬され、誇りを持てる会社になる
●従業員の行動様式こそが競争力となる
●事業領域を常に再定義し続ける
2つ目の「従業員の行動様式こそが競争力となる」では、さらに「3つの行動を重視する」という目標も掲げました。それは次の通りです。
【3つの行動を重視する】
●正しいことをする
●敬意を持って働く
●実験し、学ぶ
これは外部の方が見ると至極当然のことのように映るかもしれませんが、グループ企業がグローバルに広がる中で、「これだけはみんなで大切にしようじゃないか」という目標を具体化したものです。
つまり、冒頭に紹介した「グループとしての一体感の醸成」という課題を乗り越える意味でも、全従業員が目指すべきノーススター(北極星)となるのです。
宮原:組織風土や従業員の心理など目に見えない部分の管理のことを「ソフトコントロール」と呼びますが、これは内部統制にとって不可欠なもの。たとえば、次のようなものが挙げられます。
まずは「明瞭性」。会社の向かっていく方向、ビジョンが明確になっているかがとても重要です。
そして「規範」。正しいことをしようと社内で定義されているだけでなく、それに対する従業員のコミットメントがあるか。一人ひとりにきちんと浸透しているかが問われています。
また、「透明性」はグローバル企業にとって不可欠。外から見ても社内から見ても、組織が透明かどうか。議論がしやすい雰囲気を持っているかも大切です。いま日本企業でいろいろな問題が起きていますが、たとえ何か問題が起きたとしてもすぐに報告・相談ができる風土があれば、危機的状況に陥ることは避けられるはずです。
最後に、従業員に対する「リワード」(報奨)の仕組みも重要です。組織の時代から個の時代になったといわれるいま、従業員のモチベーションを高め、努力し貢献した者を公平に評価し、きちんと報いることが、企業の競争力の源泉となります。
内部統制というと、どちらかというとコンプライアンスを中心とした「守らねばならない、こうあらねばならない」という議論ばかりが先行しがちですが、むしろその前提となるソフト面を磨き上げ、しっかり企業文化に埋め込んでいくことが、今後さらに重要になっていくと考えます。