DXは
3層に分けて考える
DXを支援するに当たって、ジェンパクトでは「3層に分けて考える」と聞いています。
たいていの企業では、コア業務とノンコア業務に二分できます。たとえばノンコア業務である事務処理などのバックヤード業務は、我々が請け負ってAI-OCR(光学的文字認識)や機械学習を活用しながら自動化を進めていきます。これが第1層の「インテリジェント・オペレーション」です。
第2層は「データドリブン・オペレーション」と呼んでいますが、これまでコアと位置付けられていた業務を、AIやアナリティクスを駆使してノンコア化していきます。たとえば、小売業やB2C事業ならば、データドリブン・マーケティング、価格や在庫の最適化、需要予測や需給調整、また製薬会社であれば有害事象モニタリングなどの省力化や自動化です。
この第2層の領域を広げつつ、デジタル技術を活用し、コア業務のプロセスやビジネスモデルを抜本的に変化したり、イノベーションの創発を促したりするのが、第3層の「狭義のDX」です。
第1層も第2層も、デジタルを活用することで改善や効率化を狙うという意味で「広義のDX」と考えています。日本産業界では、いまのところ、この広義のDXが多く見られます。その一方で、CDO(最高デジタル責任者)を置いて、一足飛びに第3層に取り組んでいる企業もあります。
とはいえ、第3層は企業や部門のあり方の変革を伴い、そう簡単にはいかないため広義のDXからスタートしているところが多いわけですが、本気でDXに取り組むならば、第1層のデジタル化の段階から第3層について具体的に構想しておくことが不可欠です。
最近の事例をご紹介すると、「いままで経理財務部門は8割がオペレーションで、戦略的な業務は2割程度しかできていなかった。これを3年以内に逆転させたい」という相談を受けました。この場合、オペレーションの業務量そのものが減ることはないですから、第1層の自動化や第2層のコアのノンコア化が出発点でした。
そして、第3層の狭義のDXへの布石として、経理財務部門が各事業部門や他の職能部門に向けて財務関連のアドバイザリーサービスを提供する、という戦略的業務が萌芽しました。そこで、財務データのみならず非財務データの収集・統合・分析のプラットフォームの構築を支援するとともに、アドバイザリー業務に向けたコーチングを実施しました。これは、広義のDXのおかげで生まれた時間と余力を、狭義のDXで活用するモデルといえるでしょう。