大量失業の恐怖シナリオが顕在化しつつある。苦境に立たされる外食業界、働く場所を奪われた非正規・派遣社員、安泰ではなくなった正社員――。特集『大失業時代の倒産危険度ランキング』(全29回)の#24では、労働者の“リアルな声”をお届けする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
「失業予備軍」が急増中
休業者は半年で237万人増加
「職を失い『貯金も底をついた』といった相談が相次いで、電話が鳴りやまない日もある。住む場所を追い出されて、ホームレスになる人も出てきた」
生活困窮者への支援を行う「ほっとプラス」の藤田孝典氏は、現状をこう説明する。
新型コロナウイルスの感染拡大が、人々の雇用や暮らしを脅かしている。総務省の労働力調査によれば、5月の失業者数は前年同月から33万人増加の198万人に達した。この増加幅は、リーマンショックの影響が出た2010年1月以来の高水準だ。
ただ、「失業者の増加が本格化するのは、これから」と労働組合やNPOの関係者は異口同音に危機感をあらわにする。背景にあるのは、休業者、いわば「失業予備軍」の急増だ。
「コロナ拡大直後の3、4月は、『休業手当を出してもらえない』という相談が多数だった。だが、日を追うごとに、解雇や雇い止めの相談が増えている。現在、休業者としてカウントされている人も、徐々に失業者に移行していくだろう」と、飲食店ユニオンの担当者は今後を見通す。
コロナ拡大前の19年12月の休業者数は186万人であったのに対し、20年5月の休業者数は423万人となり、約半年間で237万人も増加している。
飲食、宿泊業…雇用の受け皿が大打撃
失業と人手不足が併存する時代に突入
業種別に見ると、営業自粛や外出自粛で打撃を受けた「宿泊業、飲食サービス業」の休業者数が79万人(20年5月)で、19年12月と比べて7倍超となっている。
都内のあるホテル従業員は、「コロナ拡大前、宿泊者の90%超がインバウンドだったので、現在の稼働率は10%台で大赤字。これまで外部に依頼していた清掃業務をホテルスタッフ自ら行ったりして、何とか雇用を維持してもらっている。清掃業者やリネン業者は、東京オリンピック・パラリンピックを控える中、人手不足が叫ばれていたのに、急速な人余りとなって、ホテルに付随する業者も壊滅」と深刻さを訴える。