倒産危険度ランキング#28Photo:erhui1979/gettyimages

上場企業全体を対象とした倒産危険度ランキングに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、甚大な打撃が避けられない13業種について、それぞれ業種別のランキングを作成した。特集『大失業時代の倒産危険度ランキング』(全29回)の#28では化学業界を取り上げる。22社が危険水域に入った。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

モノの消費の冷え込みが
業績悪化に直結する

 パソコンやテレビ、自動車のダッシュボードなどに使われている合成樹脂。樹脂や金属の表面に吹き付ける塗料、レジ袋などの包装材、洗剤の原料になる界面活性剤、化学繊維……化学業界の会社が生産しているものは幅広く、それなくしては私たちの生活は成り立たない。逆に言えば、モノの消費の冷え込みは、化学業界の業績の悪化につながる。

 新型コロナウイルス感染拡大は2月以降、主要国経済を縮小へと陥れた。日本でも耐久消費財の消費が急減。例えば、2020年1~6月の自動車の新車販売台数は前年同期比で約2割落ち込んだ。5月に限って言えば、前年同月比で4割も減少してしまった。

 こうした内外経済の冷え込みが化学業界にどんなインパクトを与えたか。倒産危険度を表すZスコアのランキングで見てみよう。

 化学業界は日本の産業界の中でも再編があまり進んでいないため、他業界に比べて中堅企業が多い。ランキングに顔を出している22社のうち、直近の決算期で売上高500億円以下の企業が20社。500億円を超えている積水化成品工業、石原産業にしても、それぞれ1361億円と1010億円だ。

 規模が小さい企業は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大などによって製品の市況が急変したり、製品の構成比率が変わったりすると、経営リスクが高まりがちだ。

 ランキング1位の戸田工業は、リチウムイオン電池市場の拡大に伴う需要増により、電池関連材料の売り上げは伸びているものの、中国をはじめとする世界経済の減速で主力の磁石材料や着色材料の需要が低迷している。

 20年3月期は、 電子素材の関連会社が固定資産を減損したことによる損益悪化や、戸田工業自体の電子素材事業の固定資産の減損で、純損益は52億8500万円の最終赤字(19年3月期は損益トントン)に陥った。

 自己資本比率はまだ26.2%あるが、利益剰余金はマイナスに転じ、累積損失は36億円となった。損益悪化とマイナスの内部留保は、Zスコアを大きく悪化させる要因だ。