倒産危険度ランキングでワースト12位となったバイオベンチャーのフェニックスバイオと、16位となった電子部品メーカーのFDK。特集『大失業時代の倒産危険度ランキング』(全29回)の最終回では、ボロボロになった財務状況をどう改善するのか、両社長へインタビューを敢行した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平、大根田康介)
フェニックスバイオ・島田卓社長
「PXBマウス認知度向上で22年3月期に黒字化へ」
――2018年3月期から3期連続で純損益が赤字となっているが、その理由は。黒字化にめどは付いているのか。
20年3月期に赤字が膨らんだのは、17年に買収したカナダの受託試験サービス会社で、のれんの減損損失を計上したことが大きい。そのカナダの子会社の拠点に設備投資を行っているが、当初の計画と比べて売り上げの見通しが立たなくなり、減損処理することになった。
19年3月期は同子会社の経費負担が重荷となったほか、18年3月期は顧客である製薬企業でB型肝炎治療薬の開発が停滞し、売り上げが落ち込んだことが利益を圧迫した。
当社の主要商材は、新薬開発の際に必要となる、ヒトと同じ肝細胞を持つキメラマウス「PXBマウス」。カナダの新施設が稼働すれば、本格的にPXBマウスの北米への供給が始まり、収益に貢献してくるはずだ。時期の詳細は明かせないが、今期中(来年3月末まで)には稼働できると考えている。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する前は、今期の黒字化を見込んでいたが不透明になった。来年以降は、計画通りに販売促進活動を進めていければ、22年3月期には黒字化が果たせると考えている。
――営業損益も3期連続の赤字となっているが、どう挽回する考えか。
新薬の開発現場でPXBマウスをいかに使ってもらえるかが重要だ。この数年はバイオ医薬の中でも、次世代治療薬が注目されている。
中でも、人間の遺伝情報をつかさどる核酸に直接働き掛ける「核酸医薬」や、細胞を使って病気を治す「細胞医薬」の分野で、大型の新薬が出てきている。従来の実験動物だった猿や犬では、ヒトと遺伝子が根本的に異なる。核酸医薬や細胞医薬の開発により、ヒトの細胞で動くわれわれの実験動物の強みが生きてくるはずだ。
また、北米に展開中のコンソーシアム(共同事業体)を通じて研究成果の公表を続ける。ここでPXBマウスの多様な用途を研究者に認知してもらえると期待している。