コロナにより街の診療所には閑古鳥が鳴くようになった。しかも、コロナが終息しても患者は戻らないという指摘もある。開業医が生きていくためには勤務医に戻らなければならないのか。特集『コロナで激変! 医師・最新序列』(全12回)の#4では、アフターコロナに勤務医、開業医が巻き込まれる「仁義なきサバイバル」の模様を追った。(ダイヤモンド編集部 野村聖子、鈴木洋子)
コロナで勤務医への“民族大移動”が始まる?
存在価値が揺らぐ開業医
「僕にアフターコロナはあるのでしょうか」――。関東の某県で、2年前から耳鼻咽喉科の診療所を営む開業医の男性は、大きなため息をついた。
新型コロナウイルスの感染拡大が日本で本格的に始まった3月以来、日に日に増える国内の感染者数に反比例して、診療所から患者が消え、1日の患者数が1桁という日も珍しくなくなった。
「これから夏にかけてはもともと患者が少ない時期。毎年繁忙期に入る秋ごろまで、手元資金が持つかどうか不安」(前出の男性)
この男性と同様、コロナの感染を恐れて、いわゆる“不要不急”の受診を多くの患者が控えた結果、収入減にあえぐ開業医が続出している。
東京保険医協会の調査では、昨年の同時期と比較して、9割以上の開業医は患者が減り、そのうちの35%が、患者が5割以上減ったと回答した。特に影響が大きかったのが耳鼻咽喉科、小児科である。
厚生労働省は、これまで再診のみ認めていた遠隔診療(電話やインターネットを介した診療)を、期間限定で初診から公的保険を適用できるようにし、コロナ禍を機に参入した開業医も多かったが「保険点数が低過ぎるし、検査もできず外来の管理料も取れないので、通常の対面診療の半分のもうけにもならない」(フリーランス産婦人科医の桑田吉峰氏)。
とはいえ、患者が戻らないということは、いかに日頃から無駄な受診が多かったかとも考えられる。実際「重症患者の多い在宅医療などでは、コロナの影響は少なかった」(桑田氏)といい、開業医にとってコロナ禍は、自院の存在意義が問われる事態だったことは間違いなく、「いわば“不要不急”の診療所は、運転資金が尽きたところからつぶれていく」と医療関係者は口をそろえる。
もともと開業医は勤務医に比べ、供給過多といわれてきたが、昨年から厚労省が「外来医師多数区域」というものを公開している。つまりこの区域は開業医が過剰な“レッドオーシャン”なのだが、都市部に多い。診療所の淘汰は、まずここから始まるというのが、大方の予想だ。