コロナ禍で一気に注目を集めた「感染症専門医」。“第2波”を前提とした感染防止対策には必須の医師のように見えるが、今後の需要と供給はどうなるのだろうか。特集『コロナで激変!医師・最新序列』(全12回)の#11では、注目される感染症医を取り巻く厳しい現状をまとめた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
“本物”の「感染症専門家」は3種類、キャリアパスや専門分野も大きく異なる
「感染症の専門家」と自称する人はコロナ禍で急増した。医師なら医学部で感染症について学ぶ期間はあるし、規定の研修制度を経て資格試験に合格した医師に与えられる専門医資格がなくとも、自分の好みで診療科を標榜することは違法ではない。だが、“本物”と認定できる専門家は、下表で示した3種類に分類できる。
まず、いわゆる「感染症専門医」。病院に勤務し、感染症に罹患した特定の患者を担当して治療する臨床医だ。現在は日本感染症学会の認定制度を経て専門医に登録され、感染症科や総合内科、呼吸器内科などに勤務する。
次が公衆衛生学者。感染症専門医と異なり、対象となるのは「社会・国民全体などの集団の健康向上」だ。日本の場合、医師免許を取得し、公衆衛生大学院で修士、博士号などを取得した後、厚生労働省などの国の機関やWHO(世界保健機関)などの国際機関に勤務するケースが多い。新型コロナウイルスの専門家会議では、この公衆衛生分野の専門家が多数を占めた。
ちなみに、公衆衛生にもさまざまな分野がある。感染症のみならず生活習慣病、がんなど病気の発生原因や流行状態、予防などを研究する「疫学」。さらに、医学・生物学領域でデータ収集や解析方法を研究する「生物統計学」など、主に5分野から成る。専門家会議に議長の要請により参加した“8割おじさん”こと北海道大学の西浦博教授は、この疫学と生物統計学の専門家だ。
最後が、ウイルス学者。ウイルスそのものの性質を研究することで、ワクチンや治療薬の開発に貢献する専門家だ。やはり医学部や薬学部、獣医学部を卒業した後に大学院で研究者となるルートが多い。ちなみに、動物由来の新ウイルスが多いことなどもあり世界のウイルス学者には獣医師が多い。
このように「感染症の専門家」と一口に言っても、その専門の中身は大きく異なる。コロナ禍の第1波が沈静化しつつある今、日本の感染症専門医の充足度は実際にはどうなのだろうか。