銀行の未来の姿に光を当てる連載『銀行の近未来』。三菱UFJフィナンシャル・グループの新社長に、デジタル推進をけん引してきた亀澤宏規氏が就任した。前期の最終利益で競合行に抜かれ、収益貢献の大きい米国では新型コロナウイルス感染拡大が止まらないという環境下で、新社長はどうかじ取りしていくのか。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
――新型コロナウイルス感染症への対応として、何に力を入れて取り組んでいますか。
今回のコロナは、ビジネスそのものに問題があるわけではないのに、急に売り上げが減った企業を多く生み出した。そこに資金を貸し出すのが私たちの責務だ。コミットメントラインや海外を含めると、12.5兆円の貸し出しを実行した。今後も顧客ニーズに応じて、ソリューションを提供する。
また、コロナがもたらす社会のデジタルシフトに対応していく。実際に、3月のインターネットバンキングの前月比利用者増加数は昨年3月の3倍に増え、オンライン融資サービスの「Biz LENDING」の申込件数も昨年11月と比べて3倍に増えた。さらに、融資では資金を届けられない医療関係者や学生向けに寄付を行っている。
――経営戦略の見直しは。
今回、大きく三つの経営方針を立てた。一つ目がデジタル。社会がデジタル化するので、顧客との接点や社員の働き方をデジタル化しないといけない。二つ目が強靱性。私たち自身の健全性を確保することが、融資の実行など金融オペレーションの維持につながる。三つ目がエンゲージメント。変化が大きい時代において、社員皆が共感しながら参画し、魅力的だと思える企業を運営したい。
では、この方針に沿って具体的に何を行うか。国内では、リテール(中堅中小企業・個人向け)領域のデジタル化に着手する。海外では、グローバル戦略を再構築する。これまで海外では、出資先を増やすことで量と面の拡大を続けてきた。つまり、融資を通じてバランスシートを増やすことで収益を上げてきたが、量から質を重視する方針に転換する。他にも、事務プロセスのペーパーレス化や働き方改革を進めることで、企業カルチャーの改革につなげていく。