新型コロナウイルスの感染拡大は、実体経済を大きく落ち込ませた。景気が悪化する中、倒産危険度を低下させる会社も続出している。特集『大失業時代の倒産危険度ランキング』(全29回)の#12では、最新の倒産危険度ランキングで危険水域に入った473社を対象に、Zスコアの悪化幅が大きい50社を取り上げる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
投資損失、減損、有利子負債増加
悪化要因めじろ押しの会社がトップ
今回の倒産危険度悪化度ランキングでは、ワースト3社が倒産危険度を示すZスコアを前年より10ポイント以上も低下させた。
トップのバルクホールディングス(HD)は、インターネット上の市場調査や情報セキュリティーのコンサルティングが主力事業。Zスコアの悪化要因は、損益悪化に加え、それに伴う内部留保のマイナスである繰り越し損失の拡大、さらに有利子負債の増加にある。まさに悪化要因がめじろ押しである。
同社は主に情報セキュリティー事業において、イスラエルのサイバージム社との合弁会社を米国に設立している。その合弁会社とサイバージムによる米国での共同事業で代金回収が滞り、収益計上額が減少してしまった。
結果として、バルクHDが保有するサイバージム株について投資損失引当金を計上することになった。そのほか、新型コロナウイルス感染拡大で将来の不確実性が高まったとして、固定資産の減損損失も計上した。
加えて、2020年3月期は、合弁会社である子会社の決算期変更で3カ月分の営業赤字が追加計上された。そのため、20年3月期の営業損失は前期の3億8000万円から5億6700万円に膨らみ、また最終損失は、前期の3倍強の13億2000万円となって、繰り越し損失が拡大した。
損益悪化もあり、営業キャッシュフローの赤字額が3億3700万円拡大した上、有利子負債も3600万円から1億7400万円に膨らみ、Zスコアは大幅に低下した。
2位のフェニックスバイオの20年3月期の純損失は、前期比4割増の4億1500万円。増えてはいるものの、Zスコアへの影響という意味では、有利子負債の方が大きい。
というのも、同社はいわゆるバイオベンチャー。ヒトと同じ肝臓の機能を持つマウスを利用した創薬過程における薬効評価の試験の受託が主力事業である。多くのバイオベンチャーと同様、開発過程ですぐには収入が発生しないことが多く、赤字が続くのが通例だ。同社も前期まで3期連続の赤字である。その赤字を埋めるために、バイオベンチャーは第三者割当増資などで資金を調達し、自己資本の毀損を補う。
フェニックスバイオは20年3月に、増資ではなく事後に株式に交換できる転換社債の発行で資金を調達した。少なくとも発行した時点では有利子負債として計上されるため、20年3月期末の有利子負債は、前期末の7500万円から17倍強の13億1500万円に急増してスコアを悪化させた。