エンパワメントで最も大切なことは、最初に目的・ビジョンをメンバーに対して共有することです。「何のためにチームが存在し、その仕事が発生しているのか?」と大きなビジョンから、タスクレベルまでのつながりを示してあげることが重要です。ビジョンをきちんと伝えることが、メンバーにとってモチベーションの源泉になります。

 例えば、動画学習サービス「グロービス学び放題」の事業リーダーを務めている私の場合。チームに対して単に月間営業目標を伝えるだけではなく、「成長したいと思う全てのビジネスパーソンに学ぶ楽しさと成長機会を届ける」というビジョンを伝えるようにしています。

 その際に心掛けていることは、サービスの話だけをするのではなく、自己開示すること。「自分がどういう原体験を持っている人間なのか」「その思いが今の事業にどうつながっているのか」を伝えながら、事業が始まった経緯や全社における事業の位置付けを丁寧に確認するようにしています。自己開示することで、相手も自分のことを話しやすくなる効果もあると思います。

 ただ、ビジョンを共有するだけでは相手が何に共感を示すか分かりません。テレワーク下ではコミュニケーションが不足しがちだからこそ、私はメンバーと1対1で行う対話「1on1ミーティング」を行っています。このミーティングは、仕事の相談をはじめ、周りとの連携やキャリアの展望など部下に必要なことを話したり、手助けするための時間にしています。

部下の情報は積極的に取りにいく
これからのリーダーのあり方

 日々の業務でも、メンバーが自律的に動けるよう支援するためにできることがあります。オンラインの対面との大きな違いは、言語情報が中心のコミュニケーションになること。メールやチャットなど、テキストのみのやりとりでは、メンバーの雰囲気は伝わりづらい部分があります。ですから、私自身もメンバーの状況を把握する際は、より一層気を配るようになりました。

 具体的には、1on1の時間だけではなく、ビジネスチャット上でメンバーの様子をよく見るようにしています。チャット上で書いてもらっている日報を見ながら、気持ちが乱れていたり、仕事で悩んだりしている人がいないか、よく確認するようにしています。また、メンバーからチャットで報告や質問を受けたら、ちょっとした内容のことでも丁寧にフィードバックをするように気をつけています。オンライン時代のリーダーは、これまでよりも積極的に情報を取りにいく必要がある。これがテレワークによって変わった、リーダーのあり方だと思います。