PCR検査と、抗原検査の二つは、精度の差はあれど、検体(検査の際に採取する体の組織)に含まれるウイルスに反応するため、今まさにコロナに感染しているか否かを診断する手段になる。双方とも検査精度が担保されている製品に対しては、公的保険が適用されている。

 対して抗体検査は、ウイルスに感染後、体内でつくられる「抗体」という特定の物質を検出するものだ。この抗体は、感染後1〜2週間以上経過しないと検査に反応しない、つまり「陽性」とはならないことが分かっている(JAMA. 2020;323(22):2249-2251)。

 そして抗体検査での「陰性」は、あくまでも「過去に感染していない」という意味であり、“今コロナに感染していない”とする「陰性証明」にはならない。

 抗体検査の本来の用途は、国民全体の何%に感染歴があるかを調べる疫学調査や、ワクチンができた後にどの程度の割合で抗体ができるのかなどの調査に使用することにある。

 しかも、現在一般で使用されている抗体検査は、中国製やインド製など検査精度の定かではない「簡易キット」タイプのもの。検査の正確性に疑問符が付く“占いレベル”といってもいい代物ばかりで、当然、保険適用となっている製品はない。

 K医師は、エンターテインメント業界関係者を名乗るSNSのアカウントで、抗体検査の陰性結果を興行再開の“免罪符”として解釈していると推測される事例を複数確認した。

 そしてK医師が何よりも驚いたのは、舞台芸術の活動再開に必要な経費を文化庁が助成する「文化芸術活動の継続支援事業」において、抗体検査を含めたコロナの検査費用を助成対象にしていたことだ。国までも、コロナ検査の使い方を間違っていたのである。

 ダイヤモンド編集部では、コロナの検査が助成対象になった経緯を文化庁に問い合わせた。