オンライン飲み会に対して否定的な人のほとんどが「独特の間が嫌だ」「リアルの飲み会よりも沈黙に気を使う」と漏らす。

 そのような気まずさを感じたからか、オンライン飲み会に参加した管理職からは「一緒に参加する他の管理職と事前に“あえて明るく振る舞おう”と示し合わせた。そのため、酒が弱いのにワインを飲みまくった」という涙ぐましい話も聞こえてくる。

 酒を飲み、打ち解け、本音や愚痴も飛び出す夜の飲み会は、昼間の会議とは異なり、ある意味で究極のコミュニケーションの場といえる。リモート会議は議題ベースで進むが、飲み会を同じような感覚ではやりたくない人がほとんどだろう。

 なにしろ、2014年にドイツの研究チームが発表した論文によると、ウェブ会議のようなビデオチャットや電話で話すとき、たった1.2秒の遅延が発生しただけで、相手への負の感情が生まれる可能性があると分かったという。

 Zoomのようなリモートのツールで代替できるのは、せいぜい会議やテーマを決めた雑談までで、心から打ち解けるための飲み会は難しいのかもしれない。実際、緊急事態宣言が解除されて3カ月たった今では、オンライン飲み会の話はほとんど聞かれなくなった。

 そんな中、リモートでの難点を克服しようと、あえてリアルの飲み会を推奨する企業もある。

 起業して数年目のとあるIT系ベンチャー企業も“雑談”に悩みを持っていた。この会社はもともとリモートワークを推進していた上に、コロナ禍で営業も全てリモートに変えた。その結果、社員は他の社員とも社外の顧客とも実際に顔を合わせる機会がほとんどなくなってしまったという。

 しかも、この会社は急成長していて、社員数が1年前に比べ倍増。それにもかかわらず、実際にチームで顔を合わせることができないため、企業カルチャーを浸透させづらくなっていた。

 そこで「思い切って会社から1人当たり1万円の経費を出し、社内の人たちと飲み会をすることを奨励している」のだ。

 かなり高額に思えるが1人1万円にした理由は「5000円では行こうか行くまいか迷うが、1万円ならその気になる」から。事後に報告書を提出する必要もないという気軽さだ。

 効果の程はどうだったのだろうか。「かなりの効果がありました。日常会話のみならず、中長期の会社の姿などを自然と話し合ってくれているようです」と幹部は明かす。

 前出の産業医は語る。「厚生労働省のハラスメントのガイドラインではプライバシーに“過度”に関わることを禁じているだけです。休みの日に何をしていたの?と聞くくらいは全く問題ない。もちろん、相手が嫌がっているのにしつこく聞き続けるのはNGですが、日常会話は必要なんです」

 飲み会を推奨するというのは今のご時世では勇気が要ることかもしれないし、本稿の目的もそれを推奨することではない。しかし、雑談の場を上手に設定することは、リモート時代の管理職の必須スキルといえるだろう。

Key Visual by Noriyo Shinoda