新しいマネジメントの教科書#10
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「毎日出社する」という常識が一変したオフィス環境。がらんとしたオフィスの毎月の固定費はばかにならず、“空気にお金を払っている”企業も多い。無駄を削減するため、解約や縮小をいち早く決断した企業がある一方で、拙速な判断はすべきでないという指摘もある。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#10では、「オフィスの在り方はどう決めていくべきなのか?」について考えていく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

コロナ禍で存在価値が激変?
オフィスに力を入れていた会社ほど大打撃

 緊急事態宣言により在宅勤務が進められた結果、人々の働く場所は家が中心となった。だが、それにより取り残された空間がある――オフィスだ。

「設備の充実したオフィスが魅力の一つだったのに、今は空気にお金を払っているようなものですね……」。残念そうにそう語るのは、大手IT企業に勤めるAさんだ。

 Aさんが勤める企業は、都内の一等地に広いオフィスを構えており、社員食堂やカフェテリアまである充実した設備は魅力の一つだ。しかし現在は、平日5日間のフルリモートで仕事をしているため、こうしたオフィスに関する福利厚生が受けられないでいるのだ。

 一方で、スタートアップでは、早い段階でオフィスの解約を決断する経営者も多い。元々、これから成長する予定だった若い企業では、社員数が増加するのを見越して広いオフィスを借りていたところも少なくなかった。

 しかし、誰も出社しないのなら話は別である。オフィスの賃料は月に数百万円ほどかかる。解約の決断が早ければ早いほどコストは削減され、その分事業にお金をつぎ込めるため、宣言下の5月から6月にかけて、解約が相次いだのだ。

大企業でも進む、オフィスの「縮小化」
サテライトオフィスの活用も増加傾向に

 他にも、解約にまでは踏み切らないにしろ、縮小を検討している企業は多く、オフィスの規模が大きかったり拠点数が多かったりする大企業も、その決断を迫られている。

 例えばヤフーは、リモートワークがしっかり定着しているため、社員に今後の出社体制に関する希望をヒアリングするアンケートを行い、オフィスの縮小を検討している。

 また、富士通は7月にいち早く、国内のオフィスの床面積を今後3年かけて半減させることを発表した。オフィスの形を、従来のオフィス同様に主要拠点とする「ハブオフィス」、会議などに使いやすい「サテライトオフィス」、駅付近に多数設置して在宅に近い形で利用する「ホームアンドシェアードオフィス」の3種類に分けて、縮小を目指すという。

 実際、コロナ禍の中で、富士通のようにサテライトオフィスをうまく活用する企業は増えている。レンタルスペース事業を実施しているスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏は、「コロナ禍で一時、需要がかなり減ったが、サテライトオフィスの需要で持ち直した」と語る。

本当にオフィスを解約してもいいのか?
“誰もいない空間”にお金を払い続ける意味

 しかしながら、最近になって、一度解約したオフィスを再度契約する会社が増え、あえてオフィスの拡大を検討する流れも出てきている。

 オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏は「オフィスの解約や縮小は慌てて判断しない方がいい」と話す。なぜだろうか?

次ページでは、オフィス解約や縮小を検討する前に管理職が知っておくべき「これからのオフィスに求められる4つの条件」を解説する。