新しいマネジメントの教科書#16
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オンライン会議が浸透し、地理的・時間的制約から解放された一方で、「会議の“温度感”がわからない」「司会者以外は誰も発言しない」といった新たな問題も浮上している。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#16では、オンライン会議を成功へ導くための心得を、ファシリテーションのプロが伝授する。(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)

小田木朝子
【教えてくれる人】
NOKIOO取締役
小田木朝子(おだぎ・ともこ)/ウェブマーケティングの法人営業などを経て、NOKIOO創業メンバーとして参画。教育研修事業担当役員。育休を生かし、31歳で中小企業診断士の資格取得。2019年、オンライン教育サービス「育休スクラ」を立ち上げ、法人・個人向けに展開。グロービス経営大学院修了。

「会議は対面」から
リモート参加が許容される社会へ

「会議室がどこも空いていないようです!時間をずらしてくれる部署がないか当たってみますね」「中央線が遅延しているようです。会議を30分遅らせましょう」――。

 対面会議のこのような対応に、いかに時間と労力を費やしてきたか……。オンライン会議が当たり前になった今、そのことに多くの人が気付かされたのではないだろうか?

 もちろんこれまでも、実はスマートフォンさえあれば、いつでもどこでも会議に参加できた。しかし「会議は対面」という慣行を、積極的に崩そうとする者はなかなかいなかった。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでの常識はあっという間に変わってしまった。たった数カ月で「リモート参加が許容される社会」へと変容したのである。

オンライン会議は「○○が8割」

 オンライン会議の浸透によって、会議参加の地理的・時間的制約から解放された。しかしその一方で、新たな課題も浮上している。

「参加者の反応が見えづらい」「司会者以外は誰も発言しない」「会議の“温度感”が分からない」「発言のタイミングが難しい」「いつも以上に人の目を感じる」――。

 結果、司会者のみが一方的に情報を伝えて終了する「メールで済んだのでは……?」と感じる会議、グダグダのまま何も決まらずに終わる会議、目的がよくわからない会議などが増加しているのだ。

 ではオンライン会議を「成功」に導くにはどうしたらよいだろうか?

 その鍵として「会議ファシリテーション」を挙げるのは、人材育成や組織エンゲージメントの支援を行うNOKIOO取締役の小田木朝子氏だ。「ファシリテーション」とは、組織やチームの活動がスムーズに行われるよう、支援・促進すること。そしてそれを行う者を「ファシリテーター」と呼ぶ。

 小田木氏は、会議ファシリテーターは「翻訳者」でなければならないと説く。どういうことか。順を追って説明しよう。

 2020年9月、小田木氏は飲料メーカーの大手サントリービールからこのような依頼を受けた。

「出社率50%以下を目標とし、出社とリモートワークのハイブリッドによる組織運営を実現したい。そのためオンライン会議においてもこれまで通り、闊達な議論と意思決定を行えるよう、社員の会議ファシリテーションスキルを向上させてほしい」――。

 これを受けて小田木氏は、これまでに蓄積したファシリテーションの知見を一つの研修プログラムにまとめた。

次ページでは、サントリービールの研修用に小田木氏が用意した実際のプログラムを基に、オンライン会議を成功に導くための秘訣を解説する。