ドラッカー14

分権化、目標管理、顧客創造、知識労働者――。いずれもドラッカーが広めた経営概念であり、今では世界中の企業で導入されている。特集『仕事に効く ドラッカー』(全14回)の最終回では、生前のドラッカーをよく知るジャーナリストが、時代を超越するドラッカーのマネジメント思想を解説する。

「週刊ダイヤモンド」2010年11月6日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

なぜドラッカーは今も新しいか
根幹をなす「人間主義」の思想

「最後の講義」は今なお新鮮である。ドラッカーのマネジメント思想は時代を超越する。生前のドラッカーをよく知る、米国クレアモント在住のジャーナリスト、牧野洋氏がその理由を解説する。

 米国を代表する経営学者ジム・コリンズ。出世作『ビジョナリー・カンパニー』を出版した1994年当時は、無名の存在だった。成功のきっかけをどうやってつかんだのか。恩師と仰ぐピーター・ドラッカーから直々に“啓示”を受けたからである。

 昨年11月7日、カリフォルニア州クレアモント。経営大学院ドラッカースクールが主催する「ドラッカー生誕100年祭」に呼ばれたコリンズは、何百人もの聴衆を前に講演し、恩師との運命的出会いを振り返った。聴衆には、同スクールに多額の寄付をしているセブン&アイ・ホールディングス名誉会長、伊藤雅俊の姿もあった。

 企業が持続する条件を示した『ビジョナリー・カンパニー』を出版した直後、コリンズはドラッカーからのメッセージが留守番電話に入っているのに気づいた。

「もしクレアモントまでご足労を願えるのならば、歓迎しますよ」