証券出向の経験がなければ(メガバンクグループの)社長になれなくなる――。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒木三郎社長が、国内最大のメガバンクグループ内部で激変する出世事情を予言した。伝統的に銀行優位のグループで証券子会社の存在感が高まっている理由は何か。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の番外編は、銀行出身の荒木社長本人にその真相を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
ファイアウオール撤廃は「悲願」
銀行、信託、証券の一体化を加速
――コロナ禍の経営環境と今後の見通しは。
対面営業の影響が非常に大きく、4~5月は成績が落ち込んだ。ただリモートでの営業体制を整えて在宅でセールスができるようにし、6月以降の業績は順調に回復している。
日銀の追加緩和で債券市場も立ち直り、コロナ前と遜色のない水準まで起債する企業が増えている。武田薬品工業や日産自動車のように外貨建て社債を発行する事例もあり、企業の資金調達方法は非常に多様化した。われわれからすれば、ビジネスチャンスが多い状況だ。
一方、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)の新規株式公開(IPO)が延期になった。経営環境が見通せない中、上場に二の足を踏むケースが増えている。国境を越えて行うM&A(企業の合併・買収)も、海外渡航制限のため様子見ムードが続きそうだ。
ただし国内に目を向ければ、NTTがNTTドコモの完全子会社化を公表したように、上場する子会社を持ち分100%とするか、あるいはノンコアとして売却するかという動きは、今後加速するだろう。コロナ禍で傷んだ業界においては、増資で財務基盤を強化したいというニーズは多く、再編案件が出てくる可能性も大いにある。
株式相場自体は、金融緩和が続いて政府の財政支出もある。さまざまな景気刺激策が打たれ、地合いは良い。日経平均株価は年末に2万4500円、来年は2万6000円を目指す展開が、われわれの強気の見通しだ。
――そうした中での懸念材料は何でしょうか。