乱戦!証券サバイバル#10Photo by Toshiaki Usami

三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下で、KDDIからの出資を受け入れて昨年12月に社名変更したauカブコム証券。総合金融とau経済圏の基盤を背景に、齋藤正勝社長は「ソーシャルネット証券」への転身を画策する。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#10では、齋藤社長にその真意を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)

「けんか上等」やられる前にやる!
株式手数料の無料化を宣言

――齋藤社長はインターネット証券の創成期から経営に携わっているが、足元でこれまでにない変化を感じるか。

 ええ。そもそも金融業自体がどうなのか、というのがある。

 15年くらい前、銀行は偉そうだった。例えば証券口座は銀行口座がないとつくれないし、クレジットカードや保険もそう。要は銀行ありきで、あらゆる金融サービスが銀行の上に乗っていた。銀行以外の僕らはノンバンクと呼ばれ、銀行かそれ以外かという区分だった。

 しかし今日現在、優越的地位の乱用で最初に思い付くのは、銀行ではなく、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)と呼ばれるプラットフォーマーだ。さらに日本の場合、通信キャリアが多くの顧客接点を持っている。

 金融業が特別な存在ではなくなり、数あるコンシューマーサービスの一部という位置付けになっている。これからは「新仲介業」も増え、顧客が金融サービスを受ける相手が変わっていくのではないか。

 金融機関といえばメガバンクや大手証券会社だったが、そうした古き良き金融業は「絶滅危惧種」になっている印象がある。今さら銀証連携という考え方自体が古く、お客さんにとっては当たり前の話だ。

――新型コロナウイルスの感染拡大でその流れが加速している。

 おそらく対面金融は今後、従来のサービスをネットに乗せていくのだろうが、銀行も証券会社もネット化するしかない。ITプラットフォーマーの金融サービスへの参入は避けられない。

――アマゾンも金融をやるといわれている。

 100パーセントやるでしょう。日本のカード会社が全て駆逐されるかもしれない。