顧客接点の拡大が証券各社共通の課題とされる中、優位な立場にあるのが楽天証券だ。人々の生活に密接した楽天経済圏のサービスの一環として、口座数を急拡大させている。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#8では、楽天証券の楠雄治社長に楽天流プラットフォーマー戦術を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
ネット通販の成功モデルを再現
IFAのプラットフォーマーに
――手数料ゼロ時代が日本に到来すると思うか。
最終的にはそうなるだろう。ただし重要なのは、金融機関として(手数料以外の)代替の収益源を確保し、経営の安定性を担保することであり、それがなければアグレッシブな戦略を取るべきではない。
ではどうするか。われわれは今、大量の新規口座を獲得できている。そこで主眼を置いているのは、そういった新規の方々の資産形成や資産運用に対する期待に応えられるようなサービスをつくり込むこと。その結果としてアセットが積み上がる事業モデル構造にしていくことが、王道だと思っている。
証券会社の伝統的な事業モデルは、株の取り次ぎで手数料を稼ぐことであり、それは今も基本的に変わっていない。ネット証券はそれを対面からインターネットに置き換えたが、手数料中心の収益構造であることは同じだ。お客さまに満足してもらえる付加価値の高いサービスを提供してこなかったことが、これまでの業界の歴史だと思う。
手数料ゼロの行方が注目されているが、それをやるからには証券会社自体がお客さまのニーズに合ったサービスを提供できる会社になることが重要だ。
――その事業モデル転換の現状は。
今、つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)を始めるお客さまが増えている。こうした方々を多く受け入れ、アドバイザリービジネスなどサービスマージンの高い事業モデルの土台をつくっているのが今のステージだ。ここは一朝一夕にはいかない。
米国ではネット証券のチャールズ・シュワブが新しい事業モデルを花開かせた。われわれのアドバイザリーサービスは現状では大きな収益になっていないが、トライアル・アンド・エラーを繰り返しながら日本に合った事業モデルを構築していく。
――新規口座が増えているのは新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きい。
影響はあると思う。ただコロナ前から月間10万口座を獲得できていた。それが3月に16万口座。在宅勤務が進んだことや相場変動の影響が大きい。
グループの方針もあってマーケティングコストを下げたが、4月以降も毎月約10万口座を獲得できている。そういった意味では、コロナの影響だけでなく、大きな流れとして顧客の流入が続いている状況だ。
――そこに多く含まれるであろう、投資の初心者を失望させないサービス提供が重要だ。