データ活用ゼロの会社で
データ活用教育する秘訣とは?
──ワークマンの社員教育の軸として、社員全員の行動原則にデータを置く「エクセル経営」があると思います。なぜ、「エクセル経営」をしようと思いついたのですか?
土屋:2012年にCIO(Chief Information Officer:企業の情報戦略における最高責任者)としてワークマンに入社したとき、会長から「一流の人材を育ててくれることを期待している」と言われたんです。そのとき、社員全員がデータを活用し、経営に参画できるしくみをつくろうと考えました。
私が入社した当時、ワークマンには店舗在庫の数量データすらないデータ活用ゼロの会社でした。作業服の製造販売を40年間やってきた「勘」と「経験」でなんとかやっていたんです。
でも、それだと上司の勘と経験に頼ることになり、自然とトップダウン型の組織になります。部下が常に上司の顔色を伺うようになってしまう。
「上司への忖度(そんたく)」は会社の滅亡につながりますから、このままでは成長に限界がくる。だから、データ活用力が必要だと思いました。
まずは、製品の流れと在庫の数値データを地道に集めるところからスタートし、徐々に、誰もがデータにアクセスできるようにしくみを整えていきました。
──社員全員でデータを活用する企業風土にするために、どのような教育制度を取り入れましたか?
土屋:全部は語りきれないので、具体的な方法を知りたい方はこの本を読んでいただきたいのですが、「全社員向けデータ分析講習」を熱心にやりました。
ここでのポイントは、試験の平均点が90点になるような、簡単な問題にすることです。
試験の点数がいいと、「自分はデータ分析が得意だ!」と思う人がいっぱい出てくる。
そうすると、データ活用力が上がっていく。
ほめて伸ばすのが教育の基本です。とにかく、苦手意識を持たせないこと。
そうして、続けているうちに突出した人が出てきたので、上級者コースをつくりました。そこで自発的にできた分析チームが、今も活躍してくれています。
全然エクセルを触ったことない人が、6ヵ月でみんながびっくりするような分析ツールを自分でつくっちゃったんですよ。
ある店舗の番号を入れると、その店舗に未導入の売れ筋製品リストが出るような!
すごい成果ですよね。
私が目指しているのは、凡人経営なんですよ。凡人でも、頑張らなくても、マニュアルで経営ができる。「できる人が経営できる」では限界があります。それを可能にするのが「エクセル経営」ということですね。
勘と経験による意思決定を、データに基づく意思決定に変え、誰でも参加できる経営にしました。
だから、社歴に関係なくデータを活用して平等に議論ができる。
結果的に、社員にとって「上司に忖度しない経営」になるわけです。
ps.「しない経営」の極意についてはこちらのサイトでも掲載していますので、ぜひご覧ください。
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