(2)外注するなら、ワザかヒトを盗め

 外部の力を借りる際に注意すべきことがある。それは「私たちの企画はこうです。仕様書の通りにつくってください」と丸投げしないことだ。このような依頼の仕方ではノウハウが自社の血肉に変わることは永遠にない。外注先との契約期間中に、いかにプロから多くのことを学び、あるいは盗み、内製化につなげられるかが重要だ。たとえば前述のプロダクトマネージャーの役割を外注するなら、自社に常駐してがっつりと伴走してもらって、部門横断機能としての立ち振る舞いや、難しいトレードオフに対する意思決定の技を盗む。エクスペリエンスデザイナーの役割の外注であれば、プロジェクト期間中に「優れたデザイナー」の見極め方を教えてもらう、あるいは優れた人材そのものを紹介してもらい、中途採用して業務を引き継ぐ。このように外部の力を活用していくことが理想的だ。

 また、より突っ込んだ関係性を構築するのであれば、たとえば外注先とジョイントベンチャーを組成し、能力のある人に転籍してもらうとか、M&Aにより人材を獲得するといった方法もあるだろう。

(3)中途採用では、既存の採用方針をそのまま踏襲するな

 時間とコストがかかる長い道のりではあるが、中途採用は避けて通れない。エクスペリエンスデザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーのような、高度な専門性を持つ人材を採用する際は、既存の採用方針とは異なる選考基準やプロセスを設けることが重要だ。

 たとえばエンジニアの採用においては、通常の面接に加えて、技量を確認するための面接も実施する。プロダクトマネージャーであれば、エンジニア部門やマーケティング部門との面接も実施し、部門横断機能としての立ち振る舞いを確認することが考えられる。

 また、デザイナーやエンジニアの「優秀さ」をどのように見極めればよいか分からないという声もよく聞く。1つの解決策として、レファレンスチェックを挙げたい。優秀な人材は、業界内の他の人からも「優秀だ」と言われるものだ。社員が持つネットワークやSNSを使い、優秀な人材を探し当て、根気強く声をかけ、レファレンスを取る。採用にかかる労力は相当なものだが、人事部に丸投げせず、事業部として採用を主導すべきだと思う。

 今回は、大企業の変革に必要な人材について、特に大企業に不足している3職種の要件や獲得方法を詳しく解説した。これらの人材が揃えば、まずは変革を「やってみる」ことができる。次回は、「やってみる」から「やりきる」へ、そして「ぶれない」ために必要な組織能力や土壌づくりについて述べたい。

(次回へ続く)